2016 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティックアプローチによる肝線維化治療の開発
Project/Area Number |
16K19364
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
鍛治 孝祐 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20623490)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DNMT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度ではDNMT1阻害による肝星細胞の活性化、増殖抑制を介した新しい抗肝線維化治療の開発を目的に基礎的検討を行った。 まずin vitroでの検討においてDNMT1阻害薬である5-aza-2'-deoxycytidine (5-azadC)が肝線維化において重要な役割を果たす肝星細胞(ヒト活性化肝星細胞株)の増殖を濃度依存的に抑制し、線維化マーカーであるα-SMA、TGF-β、collagen1A1およびCTGFのmRNA、蛋白発現を有意に低下させることを明らかとした。また同剤によりX-galで染色される肝星細胞の老化が促進され、細胞老化マーカーであるp21,p16,p27の発現が上昇していた。さらにin vivoで2種類のマウス肝線維化モデル(1.四塩化炭素(CCl4)投与、2.胆管結紮)において5-azadC (0.25mg/kgを週3回腹腔内投与)投与により、肝線維化が有意に抑制され、それに伴い肝内線維化マーカー発現(α-SMA、TGF-β、collagenA1など)が有意に抑制されていたことを病理学的に明らかとした。 上記の研究結果により、DNMT1を阻害することで増殖過程にある肝星細胞をターゲットとして、細胞老化の促進を介して増殖や線維化活性を抑制させることが明らかとなった。肝線維化治療におけるエピジェネティックなアプローチは現在まであまり行われておらず、今回使用したDNMT1阻害薬はDNAメチル化を介して肝線維化を抑制する可能性が示唆され、新たな抗線維化治療の開発に有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで申請時に立てた計画・目標に沿って核となる研究結果を得られており、概ね順調と考えられる。一方で、DNAメチル化状態の変化と肝線維化抑制との関連性についての十分な研究結果、考察が得られておらず、次年度の研究課題と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今回の結果を元に肝線維化治療の効果予測に有用な新しいエピジェネティックマーカーを同定する。今回DNMT1阻害薬により処理した肝星細胞株、マウス肝組織を用いてメチル化特異的microarrayにより有意に低メチル化状態を示す遺伝子を同定する。また同定した遺伝子群から、過去のデータベースを用いて、肝線維化に関連する遺伝子を抽出する。Microarayに関しては上記のサンプルより分離したGenomic DNAをBisulfite反応により conversionした後にIllumina Infinium HumanMethylation450K BeadChip array (Illumina社)を用いて網羅的なCpG islandsの同定を行う。ConversionしたDNAサンプルを海外の共同研究者へ送り、解析を委託する。
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Causes of Carryover |
当該年度において予定していたDNAメチル化状態の変化と肝線維化抑制との関連性についての研究を行っておらず、次年度に行う予定としたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度の採取したDNMT1 阻害薬により処理した肝星細胞株、マウス肝組織を用い てメチル化特異的microarray により有意に低メチル化状態を示す遺伝子を同定する。
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