2016 Fiscal Year Research-status Report
進行肝細胞癌に対する分子標的治療の効果を予測する新規バイオマーカーの探求
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16K19372
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
山口 隆志 関西医科大学, 医学部, 助教 (10730202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Smad / TGF-beta / 肝癌 / ソラフェニブ |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、ソラフェニブは切除不能な進行肝細胞癌の第一選択薬として位置づけられているが、その治療効果は限定的で個々の患者により治療効果が大きく異なる。しかし、治療効果判定は画像診断に頼らざるを得ないため、リアルタイムでの効果判定は不可能である。そのため、早期に治療効果を予測し、患者を選別できる新規バイオマーカーの同定が急務である。本研究では、部位特異的リン酸化Smadを介する癌化シグナルが、進行肝細胞癌のリアルタイムな治療効果判定を可能にするバイオマーカーとして有用であることを示すことを目的としている。 本年度は、肝癌細胞株(Huh7, およびHepG2)にソラフェニブを添加し、細胞内の癌化シグナルであるpSmad3Lと癌抑制シグナルであるpSmad3Cの経時的変化をウエスタンブロット法で検討した。ソラフェニブの増殖抑制効果を反映して癌化シグナルであるpSmad3Lは抑制され、癌抑制シグナルであるpSmad3Cが増強する傾向がみられた。また、増殖抑制の程度をサイミジン取り込み試験にて確認したところ、ソラフェニブの添加により細胞増殖が抑制されていた。従って、ソラフェニブが細胞増殖抑制効果を反映して、リン酸化Smadシグナルが変化していることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、培養細胞を用いて、ソラフェニブがリン酸化Smadシグナルに与える影響を評価することを目的とした。肝癌細胞株(Huh7, およびHepG2)にソラフェニブ10uMを添加して1時間インキュベートした後、培養細胞を溶解し電気泳動後、部位特異的リン酸化Smad抗体によるウェスタンブロット法にてSmad2/3のリン酸化状態を検討した。リン酸化Smadを介するシグナルはソラフェニブの添加によって癌化シグナルであるpSmad3Lが抑制され、癌抑制シグナルであるpSmad3Cが増強されることを確認した。また、また、増殖抑制の程度をサイミジン取り込み試験にて確認したところ、ソラフェニブの添加により細胞増殖が抑制されていた。以上の結果から、ソラフェニブの増殖抑制作用をリン酸化Smadシグナルの変化で捉えることが可能であることが示唆された。 このような部位特異的リン酸化Smadを介する癌化シグナルの変化を、フローサイトメトリー、サンドイッチELISA法など他の評価方法でも検討を行っているところである。 また、血中循環癌細胞 (Circulating tumor cells; CTC)の解析のために、ソラフェニブに投与が予定されている進行肝細胞癌の患者を選択し、血液を回収する準備を現在進めている。 以上から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、部位特異的リン酸化Smadを介する癌化シグナルの変化を、ウエスタンブロット以外のサンドイッチELISA法など、より定量的な評価が可能な方法でも確認を試みる。そのうえで、より効率的な血中循環癌細胞 (Circulating tumor cells; CTC)の細胞内シグナルの評価方法を決定するとことを計画している。 CTCの解析を行うために、インフォームドコンセントの得られたソラフェニブの投与を予定している20症例を選択し、ソラフェニブ投与前と投与2週後に血液サンプルを回収する。回収した血液サンプルからCTCを単離し、リン酸化Smadシグナルの解析を行う。 また、対象とした症例のソラフェニブの治療効果判定を、ソラフェニブ投与前、投与後1か月後、3か月後、6か月後にAFP, PIVKAIIの測定と、ダイナミックCTにて行う。なお、ソラフェニブは一般に腫瘍縮小効果が少ないことが知られており、ソラフェニブの効果を画像検査で評価する際には、腫瘍の壊死範囲を動脈相の濃染域の長径と短径で評価するmRESICT法にて行う。また、生命予後についても検討する。
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Causes of Carryover |
学会発表を行わなかったため、旅費として計上した分は使用しなかった。一方で、培養細胞の実験を繰り返し行ったため、培養液など物品費は超過した。そのため、全体では繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に引き続き、培養細胞を用いた実験も行うため、これに充てる予定である。
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