2016 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌に対するDPP4阻害剤の抗腫瘍効果とその分子機構
Project/Area Number |
16K19374
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70550961)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / DPP4阻害剤 / CXCL10 / NK細胞 / 走化性 |
Outline of Annual Research Achievements |
DPP-4阻害剤は臨床的に広く投与される糖尿病治療薬であるが、HCCに対してDPP-4阻害剤が及ぼす影響は明らかではない。そこで申請者らは、DPP-4のジぺプチダーゼ活性を中心とした多様な生物学的活性に焦点を当て、抗腫瘍免疫等のがん周囲微小環境の観点からDPP-4阻害剤の抗腫瘍効果 (腫瘍増大抑制効果) およびその作用機序を明らかにした。 ヌードマウス(BALBc-nu/nu)に対しDPP4陽性Huh7細胞を皮下移植し、腫瘍発生後にコントロール食(MF)およびDPP-4阻害剤(anagliptin, vildagliptin)添加MF食を投与し、抗腫瘍効果を検討した。DPP-4阻害剤は、腫瘍組織における NK細胞浸潤を亢進させ、有意に腫瘍増大を抑制したが、CXCR3(NK細胞受容体)中和抗体投与もしくは NK depletion(抗アシアロGM1)により腫瘍増大抑制効果はキャンセルされた。 また、リアルタイム細胞動態解析装置(EZ-TAXIScan)を用いて、走化性因子CXCL10存在下における肝癌細胞株(Huh7)へのNK細胞走化性に対するDPP-4阻害剤の効果を検討した。 DPP4阻害剤は、CXCL-10刺激によるNK細胞の腫瘍細胞への走化性を促進した。CXCL-10 (1-77aa)はNK細胞膜レセプターCXCR-3に結合してNK細胞走化性を促進し、DPP4のジペプチダーゼ活性によりshort CXCL-10 (3-77aa) となって不活化される。CXCL-10中和抗体を添加するとanagliptinによる NK細胞走化性の亢進がキャンセルされた。この作用機序として、DPP-4活性は CXCL10-CXCR3 axisを介したNK細胞の走化性を阻害するが、DPP-4阻害剤はこれを抑制することで抗腫瘍効果を発揮すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度で、ヌードマウスを用いた肝細胞癌患者に対する DPP-4阻害剤の抗腫瘍効果を証明できたこと、そしてその作用機序の一つとして 肝癌組織への NK細胞走化性亢進の関与が重要であることを証明できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果から、次年度の検討として「肝細胞癌に対するDPP4阻害剤の抗腫瘍効果における”NK細胞走化性への影響”」にfocusを絞った検討をすすめていくこととした。
【DPP-4阻害剤による CXCL-10分解阻害効果の検討】 生理活性としてintactな full-length CXCL-10 (1-77aa) は 癌細胞由来のDPP-4活性によりN末端のジペプチド分解を受けた結果、short-form CXCL-10 (3-77aa) となり不活化される。上記研究成果に示した DPP-4阻害剤のNK細胞走化性亢進作用において、実際に肝癌細胞(Huh7, Li-7)によりCXCL-10のジペプチド分解が生じ、それに対しDPP-4阻害剤がCXCL-10のジペプチド分解を抑制しているのか否かを明らかにする。full-length CXCL-10 (N末端;Val) とshort-foem CXCL-10 (N末端;Lau) のN末端の1アミノ酸の違いに注目し、以下の①-④の行程で実験を行う。 ①; Huh7細胞培地にDPP-4阻害剤投与を添加し(コントロールとして無添加群も)incubateをする。②; ①で得られた培地を一部回収し、CXCL-10抗体を用いた免疫沈降操作後SDS-PAGE にて total CXCL-10 peptide を分離し抽出。③; ②で得られたCXCL-10のN末端にHPLC 検出用ラベル標識 (PITC) をし、Edman 分解 にてN末端の1アミノ酸のみ分離。④; HPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて上記2種類のペプチドを定量する。
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