2016 Fiscal Year Research-status Report
肝癌幹細胞から成熟癌細胞への分化に伴う代謝リプログラミングのシステム解析
Project/Area Number |
16K19378
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
Qin XianYang 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 特別研究員 (60756815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肝癌 / 癌幹細胞 / MYCN / 化学予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞(cancer stem cell)は、自己複製能と多分化能をもつ癌の源として癌の予防、診断及び治療に大きく注目が集まっている。本年度は、癌幹細胞を標的とする肝癌予防剤候補非環式レチノイドの標的遺伝子として同定されたMYCN癌遺伝子は、肝癌幹細胞の制御因子及び肝癌再発の予測マーカーであることを明らかにした。具体的に以下のような成果を上げた。1)マイクロアレイデータのメタ解析では、肝癌組織のMYCN遺伝子発現は肝癌幹細胞マーカー(AFP, EpCAM, CD133, DLK1, GPC3)及びWnt/β-cateninシグナルマーカー(β-catenin, DKK1, BAMBI, CCND1)に強い正の相関、成熟肝細胞マーカー(CYP3A4,UGT2B7)に強い負の相関が見られた。2)肝癌細胞培養系においてMYCN陽性CD133陽性の肝癌幹細胞集団を見出し、非環式レチノイドにより選択的に殺されることが見られた。3)肝癌細胞のMYCN発現をsiRNAでknockdownした系では、細胞周期の停止、アポトーシスの誘導、細胞増殖及びコロニー形成の抑制が見られ、MYCN陽性CD133陽性の肝癌幹細胞集団の特異的排除において非環式レチノイドとの協調効果が認められた。4)肝癌細胞の播種濃度により構築されたMYCN低発現培養系では、細胞増殖能の低下及び非環式レチノイドに対する抵抗性が見られた。5)肝癌根治治療を受けた患者に関するコホート研究では、肝癌組織のMYCN遺伝子発現はde novo肝癌の再発に強い正の相関が見られた。以上の結果から、MYCN癌遺伝子は肝癌幹細胞の特性維持に関与することが示唆された。肝癌幹細胞から成熟癌細胞への分化に伴う代謝リプログラミングにおいてMYCN癌遺伝子の役割に関する研究は、癌幹細胞を標的とした新たな肝癌予防標的の提案につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたin vitro分化系の構築及び評価について、肝幹細胞分化誘導能を有するビタミンA類縁体非環式レチノイドの分子標的スクリーニングからMYCN癌遺伝子を同定し、肝癌幹細胞特性の維持に関与することを確認できた。MYCファミリー遺伝子は、分化した体細胞から多分化能を持つiPS細胞(人工多能性幹細胞)への作成や腫瘍形成においてリプログラミング因子としてよく知られている。肝癌幹細胞から成熟癌細胞への分化に伴う代謝リプログラミングにおいてMYCN癌遺伝子の役割及びその分子機構の解明、並びに予定していたiPS由来肝細胞/正常肝細胞分化系との比較は、次年度の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
肝癌幹細胞のin vitro分化系として、肝癌細胞にMYCN癌遺伝子のレンチウイルスベクター導入によりknockdown/knockout培養系、正常肝細胞にMYCN癌遺伝子の発現ベクター導入により過剰発現培養系を構築し、肝癌幹細胞から成熟癌細胞へ分化過程においてMYCN癌遺伝子による代謝リプログラミングへの影響を評価する。さらに、マルチオミクス解析の手法を駆使し、その分子機構の解明に目指す。
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Causes of Carryover |
当初予定していた1)肝癌細胞株パネル;2)薬剤を用いた肝癌幹細胞の分化誘導; 3)iPS細胞の分化誘導の3つのアプローチからin vitro分化系の構築及び評価について、1)と2)は順調に進展し、肝幹細胞分化誘導能を有するビタミンA類縁体非環式レチノイドの分子標的スクリーニングから肝癌幹細胞の特性維持に関与するMYCN癌遺伝子を同定したが、他に予定していた3)iPS由来肝細胞/正常肝細胞分化系の構築は遅れていたので、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
市販のiPS細胞(理研CELL BANK)/正常肝細胞を入手し、MYCN癌遺伝子の発現ベクター導入により過剰発現培養系を構築し、肝癌幹細胞分化系との比較を目指す。
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[Presentation] Hepatic orosomucoid is an additional essential regulator promoting hepatocyte proliferation during liver regeneration2016
Author(s)
Xian-Yang Qin, Mitsuko Hara, Erik Arner, Yoshikuni Kawaguchi, Norihiro Kokudo, Harukazu Suzuki, Piero Carninci, Alistair Forrest, Soichi Kojima
Organizer
AASLD2016 第67回米国肝臓学会議
Place of Presentation
John B. Hynes Veterans Memorial Convention Center (Boston, MA, USA)
Year and Date
2016-11-11
Int'l Joint Research
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