2017 Fiscal Year Research-status Report
in vivoゲノム編集による長期的生物学的ペースメーカの作成
Project/Area Number |
16K19393
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
井原 健介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50770210)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 生物学的ペースメーカ / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
心拍数が遅くなりふらつきや失神を生じる徐脈性不整脈に対する治療法は、現代医学では機械式のペースメーカを植え込む手術しかなく、そのバッテリー交換のため繰り返しの手術が必要となる。その問題点を解決するため、本来ペースメーカ細胞でない心筋細胞からペースメーカ細胞を生み出すという生物学的なペースメーカを作成する研究が行われているが、長期的なペースメーカ活動が得られず臨床応用されていない。今回我々は近年開発された遺伝子を自由に書き換えることができるゲノム編集技術であるCRISPR技術を応用し、心筋細胞の電気的活動を司る重要な遺伝子の一つであるKcnj2遺伝子に対するCRISPRを作成、マウス心筋に直接注射することにより生体内でKcnj2遺伝子をノックアウトして生物学的ペースメーカを作成することに成功した。遺伝子情報を書き換えているためその効果は永続的であることが期待されたが、ペースメーカ作成後6カ月ではペースメーカ活動が減弱・消失していた。さらなる検討の結果、作成後6カ月では予想通り遺伝子情報は書き換えられたままであったが、遺伝子が書き換えられたことにより長期的に心筋細胞自体の電気興奮性が変化しペースメーカ活動を生じなくなっていたと考えられた。本研究結果として、ゲノム編集技術を応用することにより生物学的ペースメーカを作成できることを示すことができたが、長期的なペースメーカ活動性を得るためには標的遺伝子の選定を含めさらなる検討が必要と考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初目標としていた非ウイルス性遺伝子導入による生物学的ペースメーカの作成が困難で根本的に遺伝子導入法を変更する必要性が生じた。この点に関しては計画当初の想定内であったが、新規に採用したAAVベクターとそれに対応したCRISPRの最適化に想定外に時間を要した。 さらに最終的に作成した生物学的ペースメーカの長期的なペースメーカ活動の維持が難しく、その原因や改善策の検討の必要に迫られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
in vivoでのゲノム編集が心筋においても可能であり、表現型を得ることができることは証明できたが、長期的なペースメーカ活動の維持に限界が見られ、その原因の一つとして、Kcnj2のノックアウト自体が長期的に心筋細胞の性質を変化させてしまい、短期的にはペースメーカ活動が得られても長期的にはペースメーカ活動が失われていくことが推察される。 その点の対応策として、CRISPRをさらに応用しペースメーカ遺伝子のノックインも含めて今後研究を進めていく方針である。
|
Causes of Carryover |
当初目標としていた非ウイルス性遺伝子導入による生物学的ペースメーカの作成が困難で根本的に遺伝子導入法を変更する必要性が生じた。この点に関しては計画当初の想定内であったが、新規に採用したAAVベクターとそれに対応したCRISPRの最適化に想定外に時間を要し、研究計画が遅れた。 結果としてAAVベクターは得られCRISPRの最適化も終了したが、長期的なペースメーカ活動が安定して得られないため、その原因を検討する目的で、AAVの精製度・力価を再検討し静脈注射で心臓全体でKcnj2ノックアウトを起こし、心臓全体としてもしくは心筋細胞レベルでの電気生理学的性質の経時的変化を検討する。次年度使用額はAAV調製費用と動物実験・電気生理学実験費用に使用する。
|