2017 Fiscal Year Research-status Report
新型エーラスダンロス症候群の疾患モデル動物の確立と病態メカニズム解明
Project/Area Number |
16K19396
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉沢 隆浩 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 助教 (40713392)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エーラスダンロス症候群 / Chst14遺伝子欠損マウス / 血管異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
エーラスダンロス症候群(EDS)は、皮膚や関節の過進展性と、各種組織の脆弱性を特徴とする疾患である。近年、本学医学部において、CHST14遺伝子変異を原因とする新しいタイプのEDS(mcEDS)が発見された。mcEDSでは、転倒などの軽微な外力で巨大皮下血腫を生じ重篤な出血に至る症状が認められ、病態メカニズム解明と治療法開発が望まれている。しかし、本症は疾患概念が確立されて日が浅く、病態メカニズム解明や治療法開発には至っていない。本研究は、mcEDSの疾患モデル動物の確立と、病態メカニズム解明および、基礎医学的知識基盤を構築することを目的としている。 そのために、本研究ではmcEDSの原因遺伝子であるChst14遺伝子欠損マウス(Chst14 KO)を用いた解析を行っている。しかし、Chst14ホモ接合体遺伝子欠損個体(Chst14-/-)では98%以上が胎生致死になるため、成獣における解析が困難であった。そこで、胎生期のChst14-/-の解析を行い、胎盤重量減少や、絨毛膜板の血管異常(虚血や血管径減少等)が認められることを発見した。さらに、透過型電子顕微鏡による観察から、胎盤絨毛の毛細血管基底膜の菲薄化や断裂を発見した。これらの成果は、平成29年には国際学術雑誌であるGlycobiology(IF: 3.3)に掲載された。 研究代表者は、Chst14-/-成獣皮膚で創傷治癒に変化があることを発見した。また、詳細な表現系解析のために、皮膚線維芽細胞の作成を進めている。さらに、Chst14-/-の出生率が遺伝背景による影響を受けることを見いだし、出生率の改善に取り組み、従来困難であった成獣を用いた解析に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度からChst14-/-の出生率改善に取り組み、従来の1.3%から5%程度まで改善を行うことができたため、当初の予定通り成獣を用いた解析を進めている。また、初代培養細胞を用いた表現系解にも予定通り着手している。さらに、Chst14-/-胎盤の血管異常に関する論文も報告した。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度までに得た研究結果の論文化および、近交化したChst14-/-の繁殖と成獣皮膚の表現型解析を行った。平成30年度も引き続き同解析を進める。また、mcEDSの病態メカニズムをより効率的かつ詳細に解析するために、Chst14コンディショナルKOの作出を試みる。
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Causes of Carryover |
平成29年度には17102円の次年度使用額が生じたが、これは安価な消耗品の利用や消耗品の節約などの経費削減によって生じた額であり、平成30年度に繰り越す。次年度使用額は平成30年度請求額と合わせて、成獣皮膚の解析等に用いるための消耗品購入や病理標本作製などの委託に使用する予定である。
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