2017 Fiscal Year Research-status Report
GATA4を介した循環器疾患と運動器症候群の病態連関
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16K19397
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高谷 智英 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教(特定雇用) (00450883)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨格筋幹細胞 / 筋芽細胞 / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究で発見した、骨格筋芽細胞の分化を強力に誘導するオリゴDNA「myoDN」の詳細な機能解析を行った。myoDNはテロメア配列を含む短い一本鎖DNAだが、その活性には立体構造が関与することが示唆された。分子シミュレーションによる構造解析の結果、テロメア配列の一部が分子内でスタッキングしており、活性中心を構成していることが推測された。変異myoDNの解析から、myoDNの活性に必須の塩基を同定した。また、myoDNに結合し、その活性を顕著に増強するアルカロイド分子を同定することにも成功した。myoDN-アルカロイド複合体の強力な筋分化誘導作用は、循環器疾患および加齢による筋委縮の予防や治療に有用な、新規機能性核酸分子として応用が期待される。現在、モデル動物を用いてmyoDNの生体内での作用の実証実験を行っている。 また、myoDNの新たな応用事例として、横紋筋肉腫の増殖抑制作用を見出した。横紋筋肉腫は小児で最も頻度の高い軟部悪性腫瘍であるが、治療法は確立されていない。横紋筋肉腫の一部は筋芽細胞が由来と考えられており、横紋筋肉腫の筋分化を誘導することで、増殖・転移を抑制する治療戦略が提唱されている。複数のヒト横紋筋肉腫細胞株にmyoDNを投与すると、骨格筋マーカー遺伝子の発現上昇とともに細胞分裂が抑制されることを見出した。今後も、抗横紋筋肉腫作用を有する核酸医薬としてのmyoDNの可能性を追求していく。 また、骨格筋と発生学的に近縁であり、ロコモティブ症候群およびメタボリック症候群にも深く関与する一連の細胞腫、すなわち心筋細胞、骨芽細胞、脂肪細胞におけるmyoDNの作用の検証を開始した。これらの細胞におけるmyoDNの作用を明らかにすることで、本研究が対象とする循環器疾患と運動器症候群に対して有効な予防・治療法の開発への貢献が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究で発見したmyoDNの詳細な機能解析、およびその作用を顕著に促進するアルカロイドの同定により、骨格筋分化を強力に促進する新規化合物の開発に成功した。myoDN-アルカロイド複合体は筋芽細胞だけではなく、横紋筋肉腫細胞などにも作用することを見出し、循環器疾患や運動器症候群以外の疾患への応用可能性を示すことができた。myoDN-アルカロイド複合体については国内特許および国際特許を出願しており、知的財産権の確保にも努めている。これらのin vitroの成果を踏まえ、myoDNの生体内作用を実証する動物実験を開始する環境を整えた。 さらに、ロコモティブ症候群やメタボリック症候群に関連する複数の細胞腫(心筋細胞、骨芽細胞、脂肪細胞)におけるmyoDNの作用の実証を開始し、循環器-運動器の病態連関の立体的な解明に向けた実験系を確立しつつある。また、これらの細胞を用いた新たなスクリーニング系の構築にも着手した。 本研究で開始した筋芽細胞のスクリーニング系によって有用な分子が同定されたこと、同定された分子の機能がin vitroで証明されたこと、スクリーニング系を多様な細胞腫に拡張できたことなどから、現在までの進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングによって得られたmyoDN-アルカロイド複合体のin vivoでの作用の検証を進める。また、新たな因子の同定を目指したスクリーニング実験も継続して実施する。スクリーニング実験は、昨年度まで用いていた筋芽細胞に加えて、骨芽細胞や脂肪細胞でも行い、ロコモティブ症候群やメタボリック症候群に関係する幅広い細胞腫に作用する分子を探索する。 myoDN-アルカロイド複合体の作用機序にはまだ不明な部分も多い。myoDNの活性には立体構造が重要であることから、myoDNは筋芽細胞で発現するタンパク質と相互作用することで筋分化を促進していると考えられる。そこで、磁気ビーズで沈降させたmyoDN結合タンパク質をプロテインシーケンサーで同定することを目指す。さらに、myoDNの立体構造を、これまでの分子シミュレーションだけではなく、実験的に確認する。X線小角散乱法により、溶液中のmyoDNあるいはmyoDN-ベルベリン複合体の回折像から分子構造を求める。myoDNの立体構造を実験的に決定し、その結合タンパク質を同定することにより、myoDNの活性部位や作用機序の詳細が明らかになり、筋委縮のより効果的な予防・治療法の確立につながることが期待される。 また、メタボリック症候群とロコモティブ症候群の連関について、近年、高血糖による筋再生機能の低下が指摘されている。そこで、高濃度グルコース条件下で培養した筋芽細胞における筋分化能を指標に、myoDNの作用を検証する。既に筋芽細胞の分化が低下する条件を確定しており、グルコース濃度依存的なこの異常がmyoDNによって回復するかどうかを調べる。
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[Presentation] ニワトリキメラの作出と育種への応用の試み2017
Author(s)
鏡味裕, 佐藤彩水, 佐藤知弥, 三木静華, 小野珠乙, 高谷智英, Amonrat Molee, Wittawat Molee, Supalak Prajan, Tran Hang, 平松浩二
Organizer
日本家禽学会2017年度秋季大会
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