2016 Fiscal Year Research-status Report
肥大型心筋症における微小循環不全と血管新生促進・抑制機構のメカニズム解明研究
Project/Area Number |
16K19398
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森本 竜太 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (00755499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肥大型心筋症 / 13N-アンモニアPET |
Outline of Annual Research Achievements |
1、研究実績の内容 肥大型心筋症患者における微小循環不全を評価するために画像診断モダリテイーとして空間分解能に優れている13N-アンモニアPET撮像を行い、PET動態データの定量解析ソフトであるP-MODソフトウェア を使用して安静時と負荷時の心筋心内膜と心外膜血流を計測している。現時点までに13N-アンモニアPET撮像を行った正常心筋群と肥大心群における、安静時心内膜心筋血流は正常心筋群0.79±0.21 mL/g/min、肥大心群0.62±0.14 mL/g/min であり、肥大心筋群で心筋血流が低下している傾向にあるのは明らかである。 2、研究の意義・重要性 肥大型心筋症は、遺伝性もしくは未だ解明されていない機序により、心筋細胞が肥大する疾患であり、病態進行に従い致死性不整脈を誘発し、拡張障害による心不全を起こし、末期の左室収縮不全へと移行する。肥大心筋の酸素・エネルギー需要を満たすために、初期には毛細血管網の発達を伴い微小循環のアンバランスを代償していると考えられているが、病期進行に伴い、この代償機転が破綻し心筋が虚血状態となることが示唆されている。しかし、現時点では微小循環破綻のメカニズムはもちろん、どのような患者において心事故リスクが高いかなど、不明な点が多い。13N-アンモニアPETは安静時と負荷時の血流量とともに血流予備能(MFR)を計測することが可能である。これにより微小循環不全を視覚的評価することが可能であり、心筋肥大に伴い、PET撮像と同時期に採取された血液中の虚血関連分子もしくは血管再生因子発現量を測定することにより、関連因子が刺激され毛細血管増殖が誘導されることで心筋虚血が緩和される機序を明らかにすることが出来れば、微小循環をターゲットにする新たな創薬について検討することが可能となり、臨床応用意義は大きく、学術的波及効果も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点における2群の母集団の差への仮説検定(αエラー;0.05、検出率80%)にてサンプルサイズを設定したところ、対象患者の目標症例数は21症例であった。今年度も引き続き肥大型心筋症患者の登録を行うことにより、今年度中に目標症例数に達成することは可能であり、統計学的にも心内膜心筋血流において2群間に有意な差を認めることが予想され、進捗状況に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も患者登録を継続して行う予定である。また保存血液検体を使用して、一期的に血清中におけるVEGF-A165a・VEGF-A165b・Hif-1発現量と炎症、線維化マーカーであるSyndecan-4、TGF-β、MMP-2、コラーゲン代謝物を測定することによりアンモニアPET撮像で得られた微小循環不全との関連を明らかにする。また心機能を客観的に評価することができる心肺運動負荷試験(CPX)にて計測されたPeak VO2、VE/VCO2 slope や自覚症状の変化、Heart rate recovery や心臓MRI検査によって得られた左心室収縮能および遅延造影効果有無、心臓核医学検査: MIBG によって得られた早期および後期H/M 比、wash out 比との関係性を検討するとともに、心血管イベントの有無など予後との関連を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
前年度は物品費としての支出が当初の研究計画よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は次年度使用額と本年度の請求した助成金とを合わせて、当初の予定通りELISAキット購入に充てたいと考えている。
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