2016 Fiscal Year Research-status Report
ビッグアンジオテンシン-25の測定意義と組織アンジオテンシンII生成機構の解明
Project/Area Number |
16K19413
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
永田 さやか 宮崎大学, 医学部, 特任助教 (00452920)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ビッグアンジオテンシン-25 / レニン・アンジオテンシン系 / 生理活性ペプチド / バイオマーカー / 循環器疾患 / 腎臓疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビッグアンジオテンシン-25(Bang-25)は2013年に研究代表者らが発見したヒト尿中に存在する新しいレニン・アンジオテンシン系(RA系)のペプチドである。Bang-25は組織アンジオテンシンII(Ang II)生成機構に関与していると考えられ、ゆえに循環器疾患や腎臓疾患の臓器障害に関与している可能性が高いと考えられる。また現段階では組織RA系を評価する方法はないが、尿中Bang-25が臓器障害と組織RA系の亢進をいずれも評価できる可能性があると考えられる。そこで本研究は(1)尿中Bang-25の臨床的な測定意義の解明および(2)Bang-25の組織内分布と病態生理学的意義を解明し、さらに(3)Bang-25の生成・変換機構を明らかにすることで将来的な循環器・腎臓疾患の臓器障害における診断薬や治療薬開発へと臨床応用を目指す事を目的として行った。 以前に確立したBang-25の測定系であるAmplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay(Alpha)LISA法を利用し、様々な疾患の尿中Bang-25を測定した。その結果、尿中のBang-25が血中よりも数十倍多い事が明らかとなった。さらにヒト尿中Bang-25を測定した結果、推定糸球体濾過量(eGFR)と負の相関が見られたが、尿タンパクとは相関していなかった。また糖尿病患者についても尿中Bang-25を測定したところ糖尿病患者の尿中Bang-25が健常人よりも高い事が分かった。つまり、尿中Bang-25は腎疾患における腎障害の程度を反映していると考えられ、さらに糖尿病性腎症のバイオマーカーになりうると考えられた。また、胎盤の組織抽出液をBang-25のAlpha LISAで測定した結果、胎盤組織中にBang-25に相当する分子が存在している事が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
確立したBang-25のAlpha LISA法を用いて腎臓疾患、糖尿病、ICUの患者、腎生検の腎臓組織や心疾患、オペ前後の尿・血液を含めた尿検体のBang-25を測定した。その結果、Bang-25の尿中濃度は血中に比べて高い事がわかった。また、腎生検を行った患者においても健康診断の検体においても尿中Bang-25は尿タンパクとは相関しないにもかかわらずeGFRと負の相関が見られ、また糖尿病患者においては、健常人と比べて尿中Bang-25濃度が有意に高かった。以上より、尿中Bang-25は腎障害や糖尿病におけるバイオマーカーになりうる可能性が示唆された。それゆえ研究目的(1)はおおむね達成できたといえる。しかしながら、さらに多くの種類の疾患を用いた検討や臨床パラメータとの比較を行う予定である。 さらに研究目的(2)について、ヒトの胎盤の組織抽出液をBang-25のAlpha LISA法で測定した結果、胎盤組織中にBang-25に相当する分子が存在する事が確認できた。そこで胎盤の組織抽出液からBang-25に相当する分画を単離・精製した。 また、研究目的(3)についてAogenの14番目の糖鎖の構造解析を行った結果、Aogenの3種類の糖鎖のうちの1つはBang-25と同じ事から、Bang-25の糖鎖はAogen由来であると考えられた。以上より本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
特に研究目的(2)Bang-25の組織内分布と病態生理学的意義を解明し、(3)Bang-25の生成・変換機構を明らかにする、以上を達成するために以下に示すように研究をすすめていく。 1.腎生検や剖検、手術時に得られたヒト組織検体を用いてBang-25のC末端に特異的な抗体を用いて免疫組織染色を行い組織内分布を明確にする。また、動脈硬化、心不全、心筋梗塞、腎不全等の疾患モデル動物の組織中、血中、尿中におけるBang-25の濃度をBang-25の測定系を用いて評価する。Ang I、Ang IIのようなRA系関連ペプチドの局在、および疾患重症度をコントロール動物と比較検討し、Bang-25の病態生理学的意義を解析する。さらに循環器および腎臓疾患モデル動物にRA系阻害薬を投与した際のBang-25の血中・尿中・組織中の濃度変化を観察し、血圧や臓器障害を含めた疾患病態とBang-25の関連を明らかにする。 2.種々の循環器や腎臓疾患のモデル動物やヒトの培養細胞、血液を用いて複数のプロテアーゼ阻害剤やRA系阻害剤のBang-25やRA系関連ペプチドにおける生成・変換活性に及ぼす影響を観察し、生成・変換酵素に特異的なプロテアーゼ阻害剤を検索する。また生成および変換阻害活性を示す化合物を同定した後に、循環器および腎臓疾患モデル動物に阻害剤を投与し、血圧や臓器障害を含めた疾患病態に対する阻害剤の効果およびBang-25を含めたRA系因子の変化を観察する。次に疾患モデル動物から得られた血液や組織抽出液、さらに剖検、手術時に得られたヒト組織抽出液や血液、ヒトの培養細胞を用いてBang-25の生成能が高い組織や細胞を検索する。Bang-25の生成能の高い組織や細胞が明らかとなった場合には、Bang-25生成酵素の精製を試みる。
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