2016 Fiscal Year Research-status Report
内皮eNOS-NO産生機構活性化における基底膜分子パールカン機能ドメインの探索
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16K19430
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
野中 里紗 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (90614248)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血管内皮機能 / 基底膜分子パールカン |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞外マトリックス(ECM)は、様々な疾患発症・進行において、発現異常や構造異常が認められており、ECM分子の機能解明・制御することで疾患治療へと結びつけることも期待されている。基底膜分子であるパールカンは、血管形成や形態維持だけでなく血管病変進行にも重要なECMであることが明らかになってきた。これまでにパールカン欠損マウス大動脈の解析より、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現低下による内機能低下を引き起こすことを新たに見出している。本年度は、パールカン欠損大動脈にて認められた内皮型一酸化窒素合成酵素の発現低下がどのようにして引き起こされているのかeNOS発現変動メカニズムを検討することを中心とし、パールカンsiRNAを処理したヒト大動脈内皮細胞(HAEC)を用いて、これまでに報告のあるeNOS発現変動関連分子を中心に生化学的・分子生物学的解析を行った。パールカンsiRNAを処理したHAECにおいて、eNOSの発現減少を確認したのちに、eNOS発現変動関連分子の解析を行ったところ、MAPキナーゼカスケードの一部に活性化が認められた。一方、c-Srcの活性化には変化が認められなかった。また、NO産生のためのeNOS活性化機構とパールカンの関連を明らかにするため、Ca非依存性経路の1つであるVEGF-VEGFレセプターを介する経路の解析を行ったが、パールカンsiRNAを処理したHAECにおけるVEGFRのリン酸化はやや減少傾向を示すものの有意な差は認められなかった。この時のeNOSのリン酸化においても有意な差は認められなかった。パールカン欠損で認められた内皮機能低下は、eNOSの発現低下の寄与が大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度ではパールカン欠損大動脈にて認められた内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現低下による内皮依存性機能低下における、パールカンの機能ドメインタンパク質とそのメカニズムが明らかにすることを計画しており、パールカン欠損および対照マウスの胸部大動脈から単離した初代内皮培養細胞へパールカンのドメインⅠ-Ⅴのリコンビナントタンパク質を用い生化学的・分子生物学的解析を行う計画であった。しかし、本実験で使用するパールカンコンディショナルノックアウトマウスは産仔数が少ない等、サンプルの確保が困難であるときが生じたこともあり、マウス胸部大動脈からの内皮初代培養細胞が樹立に至らなかった。そのため、こちらの計画は、パールカンsiRNA処理をした購入ヒト大動脈内皮細胞での解析に変更し、eNOS発現変動に関与するシグナル分子の解析を行った。eNOSの活性化機構への関与は、Ca非依存性経路の解析を行ったが、解析を行ったVEGF-VEGFRを介する経路では有意な差は認められなかったため、統計解析向けての追加実験および別経路での解析が必要である。また、Ca依存性経路の解析を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度に得られた結果をもとに、引き続きパールカンの内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)発現変動に対するメカニズム解析を、パールカンsiRNA処理をしたヒト大動脈内皮細胞(HAEC)を用いて、eNOSの発現変動に関与するシグナル分子の解析を中心に行う予定である。これまでに活性化が認められた経路のカスケード上流の解析を行うとともに、これまでの解析で認められた変化に対し、パールカン機能ドメインⅠ-Ⅴのリコンビナントタンパク質を用いたレスキュー実験等を用いた生化学的・分子生物学的手法による解析を行う予定である。また、NO産生のためのeNOS活性化機構とパールカンの関連は明らかにするための検討は、パールカンsiRNA処理をしたHAECを用いて、更なる解析を生化学的・分子生物学的手法により行う。eNOSによるNO産生はCa2+依存性・非依存性経路があり、複数の経路によって調節されているが、活性化経路に対する活性誘導薬物を用いた薬理学的解析等を用いて、引き続きCa非依存経路の解析を行うとともに、Ca依存性経路の解析は、Fura-2を用いたカルシウムイメージング法により蛍光顕微鏡にて解析する。また、eNOSが局在する血管内皮細胞にある細胞膜陥入構造であるカベオラ形態に対するパールカンの有無の影響は、電子顕微鏡を用いて形態学的に解析を行う。上記の方法により、内皮eNOS-NO産生機能におけるパールカン機能を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本研究で用いる予定であった遺伝子改変マウスは、産仔数が少ないこと、使用する大動脈は大動脈解離発症を起こすことがあり健常部位を解析に使用するため、回収できる大動脈内皮細胞が少なく、初代培養細胞を樹立することが困難だった為、それら関連試薬・初代培養細胞樹立に関する細胞培養関連試薬の購入が少なかった。また、パールカンドメイン各種リコンビナントタンパク質の作製も次年度に繰り越したため、それら関連試薬の購入費用を次年度に繰り越した。年度の途中より、樹立の不安定さから購入ヒト大動脈細胞を用いた方法に変更したが、本年度は以前から使用していた分を使用したが、次年度以降はあらたに細胞の購入、それに伴い、siRNAのような分子生物学解析に使用する関連試薬の購入が発生するので、その費用を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、購入した培養細胞を用いた解析を中心に行うため、細胞、細胞培養に必要な細胞培養関連試薬および培養関連プラスチック製消耗品を購入する。さらに、siRNAの手法に必要な関連試薬を購入する。また、パールカン機能ドメインのリコンビナントタンパク質の作製に必要な精製関連試薬を購入する。パールカンは、糖たんぱく質であるため、精製には細胞を用いるため、精製に必要な細胞の購入、培養関連試薬の購入が必要である。引き続きシグナル分子の解析には、ウェスタンブロット法によるタンパク質解析を行うが、現在所有している抗体以外に、別途シグナル分子に対する一次抗体および二次抗体の購入を行う。薬理学的解析に必要な化合物蛍光試薬を用いたカルシウムイメージング法を行うため、それらにかかる試薬・解析費用を含めている。また、更なる研究推進のための情報収集のための学会等への参加費を含めている。
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