2017 Fiscal Year Research-status Report
リン脂質代謝を基盤とした大動脈疾患の機序解明と治療・予防法開発に向けての基盤構築
Project/Area Number |
16K19436
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
渡辺 一広 山梨大学, 大学院総合研究部, 臨床助教 (50535549)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分泌性ホスホリパーゼA2 / 大動脈解離 / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は大動脈疾患に関わる細胞外分泌性ホスホリパーゼA2(sPLA2)を網羅的に探索し、当該sPLA2の病態における作用メカニズムを分子レベルで解明することを目的とする。 各種sPLA2アイソザイムの遺伝子欠損マウスにAngiotensin IIを持続皮下投与したところ、sPLA2-V遺伝子欠損マウスでのみ大動脈解離を高率に発症することを確認した。qPCRおよび免疫染色によりsPLA2-Vが大動脈内皮細胞に発現することを確認した。 lysyl oxidase(LOX)は細胞外マトリックスの架橋を促進することで大動脈解離を抑制する作用を有する。sPLA2-V遺伝子欠損マウスでは、Angiotensin II投与後の大動脈組織において、LOXのmRNA、タンパク発現、酵素活性が抑制されていることを見出した。それに伴い、sPLA2-V遺伝子欠損マウスのAngiotensin II投与後の大動脈組織ではCollagenの架橋が抑制されていることを確認した。 sPLA2-Vは血中リポ蛋白のリン脂質に作用してオレイン酸やリノール酸を切り出す作用を有することが知られている。ヒト大動脈平滑筋細胞にオレイン酸やリノール酸を添加することで、TGFβ刺激に伴うLOX発現が促進されることを確認した。 今後は、大動脈組織やPlasmaのリピドミクス(脂質の網羅的質量解析)を行うことで、in vivoにおいて実際にsPLA2-Vがオレイン酸やリノール酸を動員していることを示すと共に、これらの責任脂質をマウスに投与することで大動脈解離が抑制されることを確認し、大動脈解離の新規治療に繋がる可能性を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
sPLA2-V遺伝子欠損マウスの大動脈組織においてLOXの発現および細胞外マトリックスの架橋が抑制されていることが明らかとなり、大動脈解離病態におけるsPLA2-Vの作用メカニズムの一端を捉えることが出来た。また、sPLA2-V関連脂質のオレイン酸やリノール酸が大動脈平滑筋に及ぼす影響についても明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、大動脈組織やPlasmaのリピドミクス(脂質の網羅的質量解析)を行うことで、in vivoにおいて実際にsPLA2-Vがオレイン酸やリノール酸を動員していることを示すと共に、これらの責任脂質をマウスに投与することで大動脈解離が抑制されることを確認し、大動脈解離の新規治療に繋がる可能性を検討する予定である。
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