2016 Fiscal Year Research-status Report
IgE感作後の臓器感受性の違いに着目した花粉症病態の検討
Project/Area Number |
16K19441
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
増子 裕典 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50758943)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 花粉症 / アレルギー性鼻炎 / IgE / 抗原感作 |
Outline of Annual Research Achievements |
スギ花粉症はスギ花粉に対するIgE感作により生じるが、感作成立によって必ず発症するわけではなく、その後の免疫プロセスや組織の過敏性が重要な役割を果たしている。本研究ではスギ花粉感作後の発症・未発症を規定する因子を明らかにするために、花粉症“発症群”と“未発症群”の2群間で、性別、年齢、喫煙、血清総IgE等のバイオマーカー、ゲノム網羅的遺伝子多型の違いなどについて包括的に解析を行っている。 我々はこれまでアレルギー疾患発症の分子病態解明のため、遺伝的な側面から解析を加えてきた。アレルギー性鼻炎発症にはORMDL3(Allergy, 2013)、喘息にはTSLP(Nat Genet, 2011)やHAS2(Clin Exp Allergy, 2014)、アトピー性皮膚炎にはFLGやHLAなど(Nat Genet, 2011)、また血清総IgEにはHLA-C(PLoS One, 2013)の関与を報告した。スギ花粉症は喘息やアトピー性皮膚炎に比べても、Th2細胞やアレルゲン特異的IgE抗体の重要性がより明確である。一方で花粉に感作されていても必ずしも発症しないグループが存在する。 これまでの検討(N=473名)では、男性、喫煙指数が多いこと、スギIgEルミカウント値が高いことが感作後の発症と関連していた。さらに、5種花粉抗原(オオアワガエリ、ハルガヤ、ブタクサ、ヨモギ、スギ)に対する感作陽性群(N=502)において、花粉症ありと花粉症なしの2群についてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行ったところ、4遺伝子領域(Regulatory associated protein of mTOR[RPTOR]、cubilin[CUBN]、NACC2、acyl-Coenzyme A dehydrogenase[ACADS])においてP < 5 x 10-6を満たす関連が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5種花粉抗原(オオアワガエリ、ハルガヤ、ブタクサ、ヨモギ、スギ)に対する感作陽性群(N=502)における花粉症の有無についてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、4遺伝子領域を同定した。これら4遺伝子領域を含む5SNPs(rs11814420, rs12937147, rs7867262, rs1428241, rs6496622)について異なる対象者(追加群)でReplication studyを行った。対象は、喘息とアトピー性皮膚炎の既往のない20歳以上の成人548名で、健診あるいは病院受診者から文書による同意を取得し血液を採取した。感作陽性発症群196名、感作陽性未発症群132名、感作陰性発症群27名、感作陰性未発症群193名であった。追加群では5SNPsともに5種花粉抗原感作陽性の花粉症との有意な関連は認めなかったものの、先行群とのMeta-analysisにおいては、いずれの遺伝子領域も5種花粉抗原感作陽性花粉症との関連を認めた(P=0.039~6.6x10^-4)。 これら5つのSNPsのeQTLについてGTExデータベースを用いて検討を行った。rs12937147はMuscle - SkeletalにおいてRPTOR遺伝子の発現と関連し、rs6496622はEsophagus - MucosaにおいてIDH2遺伝子の発現と関連を認めた。いずれの5つのSNPsもLung組織における遺伝子発現との関連は認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き新たな対象集団の収集を行い、追加群の解析を更新する予定である。 現在は5種花粉抗原(オオアワガエリ、ハルガヤ、ブタクサ、ヨモギ、スギ)陽性者を感作陽性とみなして解析を行っている。陽性の定義を変更して解析を行うことも考えている。つまり、14種類の吸入抗原(ダニ、ハウスダスト、ネコ、イヌ、オオアワガエリ、ハルガヤ、ブタクサ、ヨモギ、スギ、ペニシリウム、クラドスポリウム、カンジダ、アルテルナリア、アスペルギルス)のどれか1つ以上の陽性者をアトピー素因ありとみなし、アトピー素因があるもののなかで花粉症の解析を行う、などである。 さらにこれまで当研究室で喘息の関連遺伝子として報告した遺伝子群と、花粉症(アレルギー性鼻炎)との関連も合わせて行う予定である。
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Research Products
(1 results)