2016 Fiscal Year Research-status Report
ALK肺癌のEMTに起因するALK-TKI耐性克服治療の開発
Project/Area Number |
16K19447
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福田 康二 金沢大学, がん進展制御研究所, 特任助手 (10722548)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ALK / EMT / miR-200 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではALK肺癌の上皮間葉転換(EMT)による獲得耐性を克服する新規治療法の開発を目的としている。これまでのin vitroでの検討から薬剤Aが間葉上皮転換(MET)を誘導し、ALK-TKIであるクリゾチニブへの感受性を回復させることを見出してきた。そこで平成28年度は、薬剤Aのin vivoでの効果を検証した。 まず、マウス肺移植モデルを構築し、ルシフェラーゼで標識したクリゾニブ耐性クローン(EMTによる耐性株)をマウス胸腔内に移植した。次に、薬剤Aで5日間の前治療を行った後、クリゾチニブへ切り替えて治療を続け、その効果をin vivoイメージングで経時的に検討した。その結果、薬剤Aの治療群はコントロール群に比べて有意に腫瘍の縮小を認めた。また、マウスの体重減少は10%以内にとどまり、大きな副作用は認めなかった。さらに、薬剤Aでの治療後、腫瘍組織をEカドヘリン、ビメンチンによる免疫染色を行ったところ、METの誘導を認めた。これらの結果より、in vivoにおけるEMTによる耐性腫瘍モデルにおいても、薬剤Aが有効であることが示唆された。 薬剤A以外にもMETを誘導できる候補薬を見出すために、耐性株のmiR-200c発現を誘導できる薬剤のスクリーニングを行った。まず、miR-200c-141プロモーター領域とルシフェラーゼ(NanoLuc)遺伝子を連結したベクターを構築した。次に、ベクターを耐性株に導入し、レポーターアッセイによるスクリーニング系を確立した。430種類の薬剤を含むライブラリを使用し、EMTによる耐性株を72時間処理した結果、薬剤A以外に新たに10種類のmiR-200cの発現誘導可能な候補薬を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の予定は、大きく2つに分けられていた。 1つは、肺移植マウスモデルにおける薬剤Aの抗腫瘍効果の検証である。当初の予定通り、マウスモデルでの検討を実施し、期待していた結果を得ることができた。 2つめは、耐性株のmiR-200c発現を誘導できる候補薬のスクリーニング系の構築である。in vivoで効果のあった薬剤A以外にもMETを誘導できる薬剤を探索することが目的である。実際に、miR-200c-141のプロモーター領域の遺伝子とルシフェラーゼ(NanoLuc)遺伝子を連結しベクターを構築し、簡便にスクリーニングできるレポーターアッセイの系を構築した。さらに、430種類の薬剤を含むライブラリを用いてスクリーニングを行った結果、10種類の候補化合物を選抜することができた。 以上のように、2つの研究を計画通りに進めており、期待していた結果も得られていることから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の検討において、in vivoでの薬剤Aとクリゾチニブとの逐次的な治療が認められた。一方、臨床では第二世代のアレクチニブが主流になってきている。そこで、確立したマウスの系を用いて、薬剤Aとアレクチニブによる治療効果についての検証も行う。 また、平成28年度の検討において、430種類の薬剤から10種類のmiR-200cの発現を誘導できる候補薬を選抜した。今後はこれら10種類の化合物の中から、耐性株のMETを誘導することでALK-TKIへ感受化させる化合物を探索する。また、in vitroでの効果が得られれば、同様にin vivoでの効果も検証を行い、より臨床応用の可能性が高い薬剤を探索する。
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