2016 Fiscal Year Research-status Report
骨髄由来線維細胞(fibrocyte)の肺癌進展における役割の検討
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16K19456
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
西條 敦郎 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 特任助教 (00467812)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺癌 / がん幹細胞 / 線維細胞 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によりヒトfibrocyteが、がん幹細胞様特性である皮下腫瘍形成能やsphere形成能を増強することを見出した。平成28年度はfibrocyte培養上清刺激により形成されたsphere形成細胞のがん幹細胞様特性を評価し、さらにfibrocyteが肺癌細胞株のがん幹細胞様特性を増強するメカニズムを解析した。 肺癌細胞株をfibrocyte培養上清により刺激することで得られたsphere形成細胞は親株に比較し、幹細胞に関連する転写因子であるOct4,Sox2,Nanogの遺伝子発現が増強し、肺癌においてがん幹細胞の表面マーカーと報告されているCD44発現細胞数が増加していることを確認した。さらにsphere形成細胞が、がん幹細胞様特性である化学療法に対する抵抗性を有すこと、および高い皮下腫瘍形成能と肺転移形成能を有すことを確認した。 次にfibrocyteの前駆細胞である単球の培養上清刺激では肺癌細胞株がsphereを形成しなかったことに着目し、単球とfibrocyteにおける分泌蛋白に関連する遺伝子発現と培養上清中の蛋白濃度の差をマイクロアレイ法およびメンブレンベース抗体アレイを用いて網羅的に解析し、単球に比べfibrocyteで増強している複数の分泌蛋白を同定した。これらの分泌蛋白に対する中和抗体や受容体阻害剤を用いてfibrocyte培養上清刺激によるsphere形成能阻害効果を評価することで、osteopontin、CCL-18およびplasmnogen activater inhibitor-1がfibrocyteによるがん幹細胞様特性の増強に関わる因子であることを見出した。これらの分泌蛋白が共通してPI3K/AKT経路を活性化することに着目し、AKT阻害剤によりfibrocyteが増強する肺癌細胞株のsphere形成能および腫瘍形成能が抑制されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Fibrocyteによるがん幹細胞様特性の増強に関わる因子を同定し、さらにAKT阻害剤が有用であることをin vitroおよびin vivoで確認した。現在肺癌細胞によるfiborcyteの分化および遊走能に対する影響および肺癌臨床検体における間質fibrocyte数とがん幹細胞発現強度の関連について概ね解析が終了しており、進捗状況としては当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
肺癌臨床検体における間質fibrocyte数とがん幹細胞発現強度の相関や、予後との関連を検討し、実臨床における肺癌とfibrocyteの間質相互作用の重要性について明らかにすることで実験的に証明したfibrocyteとがん幹細胞様特性増強に関する現象をヒトの臨床検体で証明する。
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