2016 Fiscal Year Research-status Report
炎症性中枢神経疾患の病態に基づいた脳脊髄液中診断・予後推測因子の確立
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16K19504
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西山 修平 東北大学, 大学病院, 助教 (60636017)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 炎症性脱髄性疾患 / 視神経脊髄炎 / アストロサイト / 仮足 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎スペクトラム病(NMOSD)をはじめとした炎症性中枢神経疾患は、中枢神経内で何らかの炎症が生じ様々な神経症状を来す疾患の総称である。これらの疾患の多くは原因不明で決定的な疾患特異的マーカーが少なく、臨床上診断や予後予測に苦慮する。NMOSDでは近年仮足運動障害によるアストロサイト機能障害が明らかとなった。本研究の目的は、炎症性中枢神経疾患の病態に基づき脳脊髄液中の仮足関連蛋白と細胞破壊関連蛋白を測定、診断や予後予測因子となるかを検討した上で、包括的診断プロトコルを作成することである。 炎症性中枢神経疾患は患者数が少なく、その検体収集を一施設で行うのは極めて困難であるため、当院の協力病院・施設に協力を依頼し、MS、NMOSD、急性散在性脳脊髄炎、神経ベーチェット病、神経サルコイドーシス、神経スイート病、腫瘍様脱髄疾患、Balo病といった稀な炎症性中枢神経疾患の脳脊髄液検体の収拾を行っている。現在、総検体数は約150で、引き続き検体収集を続けている。 これら検体を用い、LDHなどの細胞傷害マーカーやCRMP5やArp2/3 complexなどの仮足傷害マーカーの測定を始めている。特にCRMP5については一部のNMOSD症例で上昇していることが確認された。既に報告している脳脊髄液中GFAPやMBPとの有意な相関が無い一方、比較的重症な後遺症を残す症例で上昇している可能性が高いと考えられた。この臨床的特徴についてまとめたものを平成29年度の学会・研究会で報告していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で予定していた細胞由来プロテアーゼ、DNA結合型蛍光色素を利用したアッセイキット(CellTox; Green Cytotoxicity Assay)を用いた細胞傷害マーカー検討、および仮足内蛋白であるArp2/3 complex測定について遅れているが、CRMP5測定や臨床的特徴については順調に進んでいるため、総合しておおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き細胞由来プロテアーゼ、DNA結合型蛍光色素を利用したアッセイキット(CellTox; Green Cytotoxicity Assay)を用いた細胞傷害マーカー検討、および仮足内蛋白であるArp2/3 complex測定を行うとともに、本年度検討予定である脳脊髄液中髄鞘再生蛋白や軸索障害関連蛋白の検討を新たに行っていく予定である。 具体的には、脳脊髄液中髄鞘再生蛋白に関しては、オリゴデンドロサイト前駆細胞からオリゴデンドロサイトへ分化する過程に関連する蛋白として知られているチロシンキナーゼ(PTK)やチロシンホスファターゼ(PTP)、髄鞘再生不良に陥る因子として知られているTIP30の測定を行う予定である。また、軸索障害関連蛋白としてはニューロンのマーカーとして知られているNeuN, MAP2, Neuron specific enolase (NSE)を候補に挙げ検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたより測定用の抗体やキットを使わずに実験が遂行できたことや、購入物品自体をより安く購入することが出来たため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は新たにDNA結合型蛍光色素を利用したアッセイキット(CellTox; Green Cytotoxicity Assay)やArp2/3 complex測定キット、チロシンキナーゼ(PTK)やチロシンホスファターゼ(PTP)のELISA用抗体、TIP30測定キットを購入する予定である。それぞれが高額であるため、平成29年度予定していた予算に加え、平成28年度から繰越した研究費も必要と考えられる。
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Research Products
(2 results)