2016 Fiscal Year Research-status Report
脳脊髄液中のアミロイドβオリゴマー化抑制物質解明と早期診断・治療法開発の展開
Project/Area Number |
16K19506
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
池田 篤平 金沢大学, 附属病院, 助教 (30755773)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | アルツハイマー病 / 脳脊髄液 / アミロイドβ / オリゴマー化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Alzheimer病(AD)は認知症の過半数を占める代表的な疾患である。アミロイドβ蛋白(Aβ)、特に42アミノ酸からなるAβ1-42の産生・凝集・沈着の過程が、ADの病態の最上流に位置するというアミロイドカスケード仮説が広く受け入れられている。我々は、Aβの単量体から複数個凝集したオリゴマーへの変化、更には線維へ伸長する過程を、ヒト脳脊髄液が抑制しており、その抑制力がAD患者で減弱していること示してきており(Ono K et al. Exp Neurol, 2006, Ikeda T et al. J Alzeimer Dis, 2011)、本研究は原因蛋白を同定するプロジェクトである。 ヒト脳脊髄液中を、遠心カラムにて分注し、抑制物質が主に3000Da以下の分画に存在していることを確認した。更にHPLC(Size exclusion chromatography)を用い、1000Da付近にオリゴマー化抑制力を持つとみられる分画を同定した。更にMS/MSを使用して20種のペプチド配列を同定した。それらを、高純度で合成を行い、Photo-induced cross-linking of unmodified proteins(PICUP)法を用いて、オリゴマー状態で固定し、SDS-PAGEおよび鍍銀染色を用いて、合成したペプチドの複数種類がオリゴマー化を抑制していることを発見した。更に、サイオフラビンT法をもちい線維化への伸長も抑制していることを確認した。 合成したペプチド配列は既知の蛋白の断片に過ぎないものもあるが、抑制力を発揮した複数種類は、既知のヒト脳脊髄液中に存在するペプチドであったことから、合成され市販されたペプチドを使用し、オリゴマー化および線維化を抑制していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに進行していると考えられる。 当初の初年度の研究計画通り、ヒト脳脊髄液中のタンパクを、3000Da, 10000Daの遠心カラムにて分注し、各々の分画をPICUP法を用いて、オリゴマー化抑制作用の有無を評価し、抑制物質が主に3000Da以下の分画に集まっていることを確認した。また、Proteinase-Kで処理したところ、この分画のオリゴマー化抑制力が消失する、すなわち抑制力は蛋白/ペプチドが持つことを確認した。更にHPLC(Size exclusion chromatography; Superdex peptide)を用い、1000Da付近の分画にオリゴマー化を抑制する蛋白が存在することを示した。更にMS/MSを使用して、この分画より20のペプチド配列を同定した。 この20種類のペプチドを高純度で合成を行った。Aβと1:1で混合した後に、PICUP法にてAβをオリゴマー状態で固定し、SDS-PAGEおよび鍍銀染色を用いて、この内のいくつかのペプチドがオリゴマー化を抑制していることを発見した。更に、サイオフラビンT法をもちい線維化も抑制していることを確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
オリゴマー化および線維化を抑制するペプチドを複数種類確認した。その中でヒト脳脊髄液に存在が確認されているペプチド(これまでにはAβへの関与は指摘されていない)については、モノクローナル抗体は生成され市販されており、またELISAを用いた測定系も確立している。一方で、蛋白の断片にすぎないペプチドの中にも、ある程度の抑制力を見出したが、これらは10アミノ酸程度と短いペプチドであることから抗体等の作成は難しい。まずは、上記の脳脊髄液内で存在が知られているもののAβとの関連がこれまで指摘されてこなかったペプチドを中心に解析を行う。計画通り、抗体を用いて脳脊髄液中から除去し抑制力が低下することを確認する。更には、アルツハイマー病患者および非アルツハイマー病患者の脳脊髄液サンプル中の、このペプチドの濃度の差異を検討する事により、このペプチドがアルツハイマー病発症および進展に重要なポイントとなっていることを確認する。
|