2016 Fiscal Year Research-status Report
多発性硬化症の神経障害における病態解明と新規治療法の開発
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16K19518
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 慶太 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (20773740)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | LOTUS / Nogo / Nogo受容体 / 多発性硬化症 / 炎症 / EAE |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はLOTUS遺伝子欠損(LOTUS-KO)マウスとLOTUS過剰発現(LOTUS-TG)マウスを作成し、これらのマウスに実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導してその臨床症状の比較を行い、LOTUS-TGマウスにおいてEAEの発症初期の段階でLOTUS-TGマウスが重症化し、逆にLOTUS-KOマウスでは軽症であることを明らかにした。さらに、EAEを発症したマウスのCD4陽性Tリンパ球にLOTUSが作用し、炎症性サイトカインの産生を促進させることを明らかにした。LOTUSの作用分子としてNogo受容体が明らかにされ、また近年リンパ球上にもNogo受容体が発現していることが明らかにされたことから、LOTUSによるリンパ球への作用はNogo受容体を介して効果が発揮されていると考え、Nogo受容体欠損マウスを作成し、EAEの表現型およびCD4陽性T細胞の解析を同様に行ったところ、Nogo受容体の欠損の有無に関わらず、LOTUSはCD4陽性T細胞に結合・作用し、炎症性サイトカインの産生を促進させた。これらの結果より、LOTUSはNogo受容体以外の未知の結合分子に作用し、免疫系の増悪に関与する可能性が示唆された。これらの知見は、神経機能分子が免疫系にも作用し病態形成に重要な役割を果たしていることを示す重要な発見である。我々はこれまでに、多発性硬化症患者の病勢に一致して髄液中LOTUS濃度が変動することを明らかにしており、本研究によりその変動と病態との関りの一端を明らかにしたとともに、神経系と免疫系の制御によるこれまでにない治療法開発において重要な分子基盤となることが示唆される
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LOTUS遺伝子改変マウスのEAE表現型の解析はほぼ終了し、さらにCD4陽性細胞に対するLOTUSの免疫系にたいする機能解析については、炎症性サイトカインの解析、LOTUSとCD4陽性細胞の結合解析もほぼ終了した。Nogo受容体との関係についても、Nogo受容体欠損マウスにおける表現型の解析はほぼ終了し、Nogo受容体欠損のCD4陽性T細胞に対する炎症性サイトカインの解析、LOTUSとCD4陽性細胞の結合解析もほぼ終了した。さらに、Nogo受容体ではない未知の結合分子について、質量分析を行い候補分子を複数同定するに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
LOTUSがCD4陽性細胞に対して機能することを最終的に確認するために、EAEを発症したマウスからCD4陽性細胞を分離し、野生型マウスもしくはLOTUS遺伝子改変マウスに移植しその臨床経過の観察を行う。また、LOTUSの未同定の結合分子を同定し、その候補分子の機能阻害を行うことによりEAEの炎症制御効果についてin vivo, in vitroにおいて検証を行う。これと並行して、LOTUSの軸索変性制御効果について、初代培養を用いた実験系により検討を行う。そして、最終的にはその治療を同時に行うことによる病態制御効果の確認を行い、あらたな治療法としての彼末威を検討する
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Causes of Carryover |
効率よく試薬を使用した結果、試薬の使用量を節約することができたため、購入量が一部予定よりも下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要試薬の購入費として使用する。
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