2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代拡散・磁化率・形態MRI解析による筋萎縮性側索硬化症の早期診断法の確立
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16K19520
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 賢司 岩手医科大学, 医学部, 助教 (80646852)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / MRI / 拡散尖度イメージング / 定量的磁化率マッピング / 拡散テンソル |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の画像診断は近年急速に進捗しているが、病初期においては特徴的な神経学的徴候を欠く場合が多く、病態や進行も多様であるため、早期診断に対する画像診断・解析技術は未だ十分確立していない。現時点でALSの有効な治療法は確立されていないが、近年の病態機序の解明に伴い、遺伝子治療や疾患修飾薬による早期治療介入が現実のものになりつつあり、簡便性・汎用性・定量性を有する高精度早期診断バイオマーカーの確立が急務である。そこで我々は、独自に開発した次世代MRI解析法(拡散尖度イメージング[diffusion kurtosis imaging, DKI]、定量的磁化率マッピング[quantitative susceptibility mapping ,QSM])を用いて、筋萎縮性側索硬化症における脳微細変化を検討し、その障害を最も鋭敏に検出可能な指標を明らかにすることで、高精度早期診断技術の確立を目指している。 初年度は、岩手医科大学附属病院神経内科に通院・入院し、Awajiの診断基準を満たすALS患者15名と健常者ボランティア14名の撮像を実施した。独自に開発したソフトウェアを用いて、DKIより種々の拡散指標マップ(mean kurtosis [MK], fractional anisotropy [FA], mean diffusivity [MD])とQSMより磁化率指標マップ(magnetic susceptibility [MS])を算出し、早期に器質的変化をきたす錐体路と運動野を対象に、Johns Hopkins大学の公開アトラスを用いて自動計測による定量化解析を行った。ALS患者における皮質脊髄路のMK値・FA値の減少とMD値の上昇、運動野後部のMS値の上昇を捉えることができ、これは軸索変性・脱髄や鉄沈着などの病理学的変化を反映していると考えられた。また、感度はMK、特異度はMD,MSが高値を示した。したがって、DKI・QSMの複数の指標を総合的に評価することで、ALS患者の画像診断精度が向上する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ALS患者・健常者ボランティアのリクルートおよびMRI撮像は順調に進んでおり、DKI・QSMより拡散・磁化率指標マップを算出して錐体路と運動野の自動定量解析を行い、ALSの診断指標を見出すことができた。一方、皮質延髄路のアトラス構築およびそれを用いたサブグループ解析は行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ALS患者の撮像および画像解析は極めて順調に進捗しており、次年度はALS患者の追加撮像および現在構築中のアトラスを用いたサブグループ解析を進め、他の画像所見や臨床評価指標との比較を加えることで、ALSの高精度診断指標の意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
サブグループ解析を行い学会にて発表する予定であったが、その準備に時間を要しており、英文校閲料・学会出張費などの未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ保存用消耗品、英文校閲料、学会出張費などの経費に充てる。
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