2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K19531
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
吉田 陽子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (00586232)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肥満 / 糖尿病 / 褐色脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満や糖尿病により健康寿命の短縮や全死亡率が上昇するため、これらの病態を解明することは極めて重要である。これまで我々の研究グループでは、肥満や糖尿病、心不全時に白色内臓脂肪が老化することで全身のインスリン抵抗性が生じ、これらの老化疾患の病態が負に制御されることを明らかにしてきた。褐色脂肪組織はかつて主に乳幼児に存在する熱産生器官として認識されてきたが、今日では、成人にも存在し全身の代謝を制御する可能性を秘めた臓器であることがわかってきた。このことから褐色脂肪不全時には全身の代謝に大きな影響を及ぼす可能性が高く、代謝不全の制御において非常に重要な標的臓器になると思われる。FXaは肥満に伴い上昇することが以前よりわかっていたが、肥満や糖尿病の病態における意義は殆どわかっていなかった。そこで本研究では、血液凝固第Xa因子(FXa)により全身の代謝不全が生じる機序を解明することを目的として研究を開始した。 野生型マウスに高脂肪食を与え肥満モデルを作成したところ、褐色脂肪組織が機能不全を生じるとともにFXaの発現が増加した。FXaは白色脂肪組織においては、Proteinase-activated receptor-2(PAR2)に結合し脂肪炎症が生じることは以前より報告されていたが、褐色脂肪組織ではPAR2ではなく、PAR1が多く存在し、かつ肥満で発現レベルが上昇することがわかった。またこれらの形質はFXa阻害薬の投与により改善した。我々はPAR1を抑制することで褐色脂肪細胞内ミトコンドリアの活性酸素レベルが低下することを確認しており、肥満時にはFXa-PAR1-ミトコンドリア活性酸素上昇-褐色脂肪不全という経路により糖尿病が発症、進展する可能性が高いと考えられる。今後、その機序についてさらに検討するために、PAR1ノックアウトマウス等を用いた実験でさらに検証を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度の研究計画として当初予定した通り、肥満モデルマウスにて褐色脂肪機能不全が誘導されること、またこの褐色脂肪不全はFXa-PAR1シグナルの増加を介して生じていることが再検証された。またFXa阻害薬を用いた検証実験も当初の計画通り遂行でき、その機序を解明するための培養細胞などを用いた実験も開始している。また当初作製予定であった遺伝子改変マウスの作製は完了し、現在コロニーを拡大して実験を開始しているところであり、本研究は概ね順調に進展しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、肥満時にはFXa-PAR1シグナルを介して褐色脂肪の機能不全が生じ、糖尿病などの全身代謝障害生じること、またこれらの形質はFXa阻害薬の投与により改善することがわかっている。また予備実験によりPAR1を抑制することで褐色脂肪細胞内ミトコンドリアの活性酸素レベルが低下することを確認しており、今後は肥満時のFXa-PAR1-ミトコンドリア活性酸素上昇-褐色脂肪不全という経路の検証と機序の解明を行っていく。 具体的には、全身および褐色脂肪組織特異的PAR1ノックアウトマウスに肥満モデルを作成し、表現型を解析する。また、FXaの産生を促進するTissue Factorを発現するアデノ随伴ウイルスを褐色脂肪組織内に投与することでFXaを過剰発現したマウスを作成し、表現型を解析する。褐色脂肪組織を中心とする主要代謝臓器や褐色脂肪細胞株を用いて、DNAマイクロアレイ解析やメタボローム解析、プロテオミクス解析を行い、FXaが褐色脂肪細胞不全を介して全身の代謝異常を惹起する詳細な分子機序を検証する。
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Causes of Carryover |
概ね当初の計画通り予算を使用できたが、一部の購入品にて当初の予定よりも低価格で購入できた物品があったため、若干の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度へ繰り越した研究費は今年度購入予定の試薬や消耗品、実験動物の購入に使用したいと考えている。
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