2016 Fiscal Year Research-status Report
遊離脂肪酸の量的・質的変化と好中球の動態変化による内臓脂肪組織炎症の解明
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16K19532
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡邉 康春 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員講師 (80646307)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 好中球 / 炎症 / 脂肪組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満に伴い増加した遊離脂肪酸が、内臓脂肪組織(Visceral Adipose Tissue:VAT)への免疫細胞の浸潤を促し、炎症を惹起・増悪することが知られている。我々は、定常状態においてVATの好中球がIL-1βを高発現し、その発現増加には脂肪細胞とのクロストークが重要であることを見出した。 平成28年度は、脂肪細胞と好中球のクロストークの詳細な解析のため、脂肪細胞株と骨髄由来好中球の共培養による遺伝子変化をDNAマイクロアレイで網羅的に解析し、遺伝子発現が2倍以上に変化する59遺伝子を同定した。その中には、マクロファージのVAT浸潤に関与することが報告されている分子もあった。 β3アドレナリン受容体作動薬CL316,243のマウス腹腔内投与により、血中遊離脂肪酸が増加し、VATにおいて顕著な好中球浸潤や炎症反応、インスリンシグナルの阻害が誘導された。また、抗Gr-1抗体の投与による好中球の除去により、CL316,243投与によるVATの炎症反応やインスリンシグナルの阻害が改善することから、VATに浸潤した好中球は炎症反応とインスリンシグナル阻害に関与することが示唆された。 さらに、CL316,243投与によりVATのケモカイン(CXCL1, CXCL2)および脂質メディエーターであるロイコトリエンB4(LTB4)の生合成関連タンパク質(細胞質型ホスホリパーゼA2、5-リポキシゲナーゼ、5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質)の遺伝子発現が増加した。以上から、遊離脂肪酸の増加に伴う好中球のVAT浸潤に、ケモカインやLTB4が関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、DNAマイクロアレイで脂肪細胞と好中球のクロストークの詳細な解析を行い、マクロファージのVAT浸潤に関与することが報告されている分子を同定することができた。また、好中球がVATの炎症反応やインスリンシグナル阻害に関与する結果を得ることができ、VATにおける好中球の機能を示唆する結果を得ることができた。さらに、遊離脂肪酸の増加に伴う好中球のVAT浸潤に、ケモカインやLTB4の関与が示唆され、平成29年度はその検証を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.VAT好中球の動態とその活性化機構の解明:脂肪細胞との相互作用による好中球のIL-1βの発現誘導機序を解明するため、両細胞間の相互作用が、接触性相互作用と液性因子のどちらに因るのかトランスウェルを用いて明らかにする。 2.遊離脂肪酸によるVAT好中球の活性化機構の解明:遊離脂肪酸による好中球のIL-1β産生に、インフラマソームの活性化が必須であるのかを明らかにする。NLRP3インフラマソームの構成成分であるNLRP3, ASC, Caspase-1のそれぞれの遺伝子欠損マウス、または野生型マウスに遊離脂肪酸産生を誘導するβ3アドレナリン受容体作動薬(CL316,243)を投与し、VATを器官培養する。培養上清中のIL-1β産生量をELISA法で測定し、インフラマソーム依存性を明らかにする。 3.遊離脂肪酸の量的・質的変化による好中球浸潤の誘導機構の解明:平成28年度の研究成果として、遊離脂肪酸の増加に伴う好中球のVAT浸潤に、ケモカインやLTB4が関与する可能性が示唆された。平成29年度は、好中球のVAT浸潤にどの遊走因子が関与するのか明らかにするため、ケモカインレセプターの阻害剤やケモカイン中和抗体の投与が、CL316,243投与による好中球のVAT浸潤を抑制するのか解析する。また、LTB4の関与を明らかにするため、LTB4の生合成酵素である5リポキシゲナーゼの遺伝子欠損マウスにCL316,243を投与し野生型マウスと比較して解析する。
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Causes of Carryover |
研究実施当初、マウスの繁殖効率が悪く平成28年度に計画していた研究の一部が遅延したため、次年度使用額が生じた。現在のマウスの繁殖状況は良好であり、平成29年度に継続して研究を行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
VATにおいて、遊離脂肪酸による好中球のIL-1β産生に、インフラマソームの活性化が必須であるのかを明らかにする。NLRP3インフラマソームの構成成分であるNLRP3, ASC, Caspase-1のそれぞれの遺伝子欠損マウス、または野生型マウスにCL316,243を投与後、VATのIL-1β産生量をELISA法で測定し、インフラマソーム依存性を明らかにする。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] HIF-1α in myeloid cells promotes adipose tissue remodeling toward insulin resistance2016
Author(s)
Takikawa A, Mahmood A, Nawaz A, Kado T, Okabe K, Yamamoto S, Arif A, Senda S, Tsuneyama K, Ikutani M, Watanabe Y, Igarashi Y, Nagai Y, Takatsu K, Koizumi K, Imura J, Goda N, Sasahara M, Matsumoto M, Saeki K, Nakagawa T, Fujisaka S, Usui I, Tobe K
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Journal Title
Diabetes
Volume: 65
Pages: 3649-3659
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Inflammatory responses increase secretion of MD-1 protein2016
Author(s)
Jennings RT, Odkhuu E, Nakashima A, Morita N, Kobayashi T, Yamai I, Tanaka M, Suganami T, Haga S, Ozaki M, Watanabe Y, Nagai Y, Takatsu K, Kikuchi-Ueda T, Ichimonji I, Ogawa Y, Takagi H, Yamazaki T, Miyake K, Akashi-Takamura S
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Journal Title
International Immunology
Volume: 28
Pages: 503-512
DOI
Peer Reviewed
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