2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K19540
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂本 昌平 九州大学, 大学病院, 助教 (90761502)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖代謝 / インスリン抵抗性 / プリン作動性化学伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
プリン作動性化学伝達とインスリン分泌およびインスリン感受性の間に介在する分子生物学的メカニズムを検討した。 野生型およびVNUT欠損ラ氏島へのプリン受容体作動薬および阻害薬の添加から、P2Y13受容体シグナルがインスリン分泌において中心的役割を果たしていることを明らかにした。 次にインスリン感受性に対するプリン作動性化学伝達の制御機構を検討した。初代培養肝細胞ではATPがグルコース応答性に分泌され、その反応はVNUT依存的であった。また、VNUT欠損肝細胞においてAktおよびmTORのリン酸化が亢進し、プリン受容体阻害薬等の添加実験から肝臓のプリン受容体化学伝達はインスリン受容体シグナルを抑制性に制御している事が明らかとなった。生体ではVNUT欠損マウス肝臓においてAktの活性化とグルコキナーゼの発現増加、酸化ストレス亢進が認められ、解糖系の促進が示唆された。同時に、mTORの活性化によるオートファジーの抑制、FGF21の発現亢進および血中濃度上昇を認めた。更にマクロファージの減少とM1/M2比の低下から、VNUTは炎症を制御している事が明らかとなった。つまりプリン作動性化学伝達は肝細胞レベルで直接インスリン受容体シグナルを調節するのみならず、組織レベルでは炎症を介して間接的にもインスリン受容体シグナルを制御していると考えられた。またVNUT欠損マウスの白色脂肪組織ではアディポネクチンの発現亢進を、筋肉ではAMPKのリン酸化亢進を認め、プリン作動性化学伝達は肝臓だけではなく、全身の糖代謝へ影響している事が明らかとなった。 以上の結果はVNUTを介したプリン作動性化学伝達が糖代謝を制御しているという過去の我々の報告を発展させた結果であり、プリン作動性化学伝達と糖代謝の間に介在する詳細なメカニズムを解明することが、新たな糖尿病治療薬の開発につながると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はプリン作動性化学伝達と膵β細胞からのインスリン分泌、および来年度予定していたプリン作動性化学伝達と肝細胞におけるインスリン受容体シグナルのクロストークを中心に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は平成28年度の研究結果を踏まえて肝臓および白色脂肪におけるプリン作動性化学伝達の働きをより詳細に評価する。過去の報告から筋肉ではVNUTではなくパネキシンチャネルを介したプリン受容体化学伝達が中心に働いていると考えられたため、当初の研究計画では筋肉の検討は予定していなかった。しかしながら研究実績で述べたようにVNUT欠損マウスでは筋肉のAMPKのリン酸化亢進を認めており、その変化がVNUTを介したプリン作動性化学伝達の直接的な作用であるか、アディポネクチン等を介した間接的な作用であるか等について検討を行う必要があると考えられた。 また、平成28年度の研究計画に記載していたものの、膵ラ氏島レベルではプリン作動性化学伝達が膵α細胞のグルカゴン分泌に与える影響を評価することが困難であったため、今後はαTC細胞を用いた実験を予定している。
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