2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K19540
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂本 昌平 九州大学, 大学病院, 助教 (90761502)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖代謝 / インスリン分泌 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は膵α細胞の働きとVNUT阻害薬を中心に検討を行った。 VNUT欠損マウスにおけるグルカゴン分泌の低下について解析するため、単離ラ氏島を用いて分泌刺激試験を行った。VNUT欠損マウス由来の単離ラ氏島からのグルカゴン分泌は野生型と比較して軽度低下を認めたが、有意な変化は認めなかった。 次にVNUT阻害薬(X)の阻害効果と耐糖能に与える影響について検討した。生理食塩水投与群をコントロールとし、阻害薬投与群とでクロスオーバー試験を行った。阻害薬もしくは生食投与1時間後の経口糖負荷試験において、野生型マウスでは阻害薬投与時に有意な血糖値低下とインスリン値上昇を認めた。VNUT欠損マウスでは阻害薬投与による血糖変化はみられなかった。インスリン負荷試験では、野生型、VNUT欠損マウスいずれも阻害薬による血糖値の変化はなかった。VNUT欠損マウスにおけるインスリン感受性改善がVNUTの長期阻害の結果である可能性が考えられたため、生食もしくは阻害薬を連日投与し、2週間後に耐糖能を評価した。経口糖負荷試験は単回投与と同様の結果であったが、インスリン負荷試験では阻害薬投与により血糖値が有意に低下した。予想されたようにインスリン感受性の改善には一定期間のVNUT阻害が必要であると考えられた。次に膵ラ氏島における阻害薬の効果を解析した。VNUT阻害により膵ラ氏島からのグルコース応答性ATP分泌は有意に抑制されたが、インスリン分泌に関しては上昇傾向となったものの現時点では有意な変化を認めなかった。今後は膵ラ氏島に関して投与条件の再検討が必要と考えられた。 以上の結果からVNUT阻害薬(X)は膵ラ氏島においてATP分泌を抑制することでインスリン分泌を上昇させ、個体レベルの血糖値低下につながっている可能性が示唆された。更にVNUTの長期間の阻害はインスリン感受性を改善する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
阻害薬実験および膵ラ氏島実験に多くのマウスを必要としたため、当初本年度に終了を予定していた脂肪組織の解析が不十分である。しかしながら、当初来年度に予定していた阻害薬の解析を本年度中にほぼ終えており、来年度まで脂肪組織の解析を継続することで必要な個体数を満たし、本実験計画をすべて終了することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
阻害薬実験について、膵ラ氏島レベルではインスリン分泌が上昇傾向となったものの阻害薬の効果は個体と比較して乏しく、整合性が得られていない。膵ラ氏島における実験方法の再検討(グルコース濃度や阻害薬濃度の最適化)や個体数を増やし、解析する。しかし、個体と臓器、単離ラ氏島間では神経など制御メカニズムが異なっており、これらの影響も検討する必要がある。さらに、肝臓をはじめとしたインスリン標的臓器における阻害薬の効果を解析する。インスリン感受性改善メカニズムについては脂肪組織についての実験を継続中であり、来年度中に終了する。 また、本研究で肝臓のプリン作動性化学伝達は直接的な肝細胞への影響と炎症を介した間接的な影響の両面でインスリン感受性を調節していることが明らかとなったため、種々の炎症に着目した解析を新たに検討している。
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