2016 Fiscal Year Research-status Report
生理活性因子AGFの抗肥満作用機序解明と寿命延長作用の検討
Project/Area Number |
16K19541
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉崎 太一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 研究員 (00468480)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Angptl6/AGF / 肥満 / メタボリックシンドローム / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではメタボリックシンドロームなどに関係する新たな生理活性因子であるアンジオポエチン様タンパクファミリーの一つであるAGF(angiopoietin-related growth factor)の機能解析を目的としている。主に肝臓から分泌され、末梢のエネルギー代謝に重要な骨格筋や脂肪組織でのエネルギー消費亢進などによる抗肥満作用が示唆されており、またアンギオポエチンと同様に血管内皮細胞に作用して血管新生および血流促進作用を有し、肥満に伴うメタボリックシンドロームを改善しながら、血管にも作用することで心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の予防にもなると考えられる。抗肥満効果の検証として、AGF過剰発現マウスのエネルギー消費量を間接熱量測定法にて評価し、野生型マウスに比してエネルギー消費量は増加を認め、X線CT検査においては、内臓および皮下脂肪の減少を認め、体重減少の要因と考えられた。高脂肪食負荷試験においても、AGF過剰発現マウスでは、体重増加の抑制を認めた。さらに、肥満2型糖尿病モデルマウスであるLeprdb/LeprdbマウスにAGFを全身性に過剰発現させたマウス(CAG-AGF;Leprdb/Leprdb)を作成し、AGFの作用を検証した。摂餌量は同等だが、Leprdb/Leprdb マウスに比較し、CAG-AGF;Leprdb/Leprdbマウスは体重の減少を認め、インスリン感受性も改善した。また、間接熱量測定において、野生型マウスに比しLeprdb/Leprdb マウスはエネルギー消費量が減少したが、CAG-AGF;Leprdb/LeprdbマウスではLeprdb/Leprdb マウスよりも有意に高値を示し、高度な肥満に対してもAGFの抗肥満作用は有効であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AGFの中枢神経系への作用については脳室内投与法の検討を行なっており、また視床下部への導入するAAVベクターも準備中である。 AGF受容体の探索、同定においては、AGFと結合する蛋白を架橋するクロスリンカーの選定を行っている。 AGF発現を誘導する化合物の探索にあたっては、AGF遺伝子と、遺伝子発現調節領域を充分に含むAGFのBACクローンを用い、大腸菌内の相同組み換えによってAGF遺伝子のexon2内のOpen Reading Frameにルシフェラーゼ遺伝子を挿入して、3T3L1などのAGF発現細胞にトランスフェクションすることでルシフェラーゼ分泌安定株を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
AGFの特に骨格筋や脂肪組織など末梢組織への作用機序の解析を中心に検討していく予定である。ex vivoや、初代培養骨格筋細胞・脂肪細胞、C2C12、3T3L1などを用いて、Flux analyzerによる代謝状態の評価を行い、メタボロームやプロテオーム解析を合わせて行うことで標的分子の同定を試みる。寿命に対する作用として、AGF過剰発現マウスの骨格筋、脂肪組織、肝臓などにおけるFoxO1の発現や細胞内分布、SIRT1活性の評価や細胞・組織老化の評価などを行いつつ、長期飼育において生存率が改善されるか観察を行なう。
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