2017 Fiscal Year Research-status Report
Trpチャネルを介したGLP-1・GPR40依存性インスリン分泌機構に関する研究
Project/Area Number |
16K19545
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
吉田 昌史 自治医科大学, 医学部, 講師 (50528411)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インスリン分泌 / 膵β細胞 / 糖尿病 / インクレチンホルモン / GLP-1 / GPR40 / Trp |
Outline of Annual Research Achievements |
最近2型糖尿病治療薬として1)インクレチン関連薬や、2)G protein-coupled receptor 40受容体作動薬が注目を集め、臨床応用や治験が実施されているが、その作用機序は明らかではない。我々はtransient receptor potentialチャネル(Trp)を介する新規インスリン分泌経路を発見し、1)、2)は本経路を刺激し、インスリン分泌を増強する事を報告してきた(Diabetes.2014)。 本研究では、1)、2)刺激からTrpに至るまでの更なるシグナル解析を実施した。また、これまで機序不明とされてきたインスリン分泌促進物質・抑制物質の多くが本経路に関与することが示唆され、その検討も実施した。 H28年度、我々はGPR40受容体刺激がTrpC3チャネルを開口させる事でインスリン分泌を促進する事、生理的濃度のアドレナリンはα2A受容体-cAMP抑制を介してインスリン分泌を抑制することを報告した。 H29年度は更にcAMP-EPAC2-Trpm2経路、TrpC3経路の新たな制御物質・調節因子・シグナルの解明に着手。オキシトシンの作用を検討した。10 nMオキシトシンは膵β細胞背景電流を有意に増加させ、インスリン分泌を増強する事が明らかになった。しかしながら、オキシトシンが作用するチャネルの同定、シグナルの解明には至らず、今後更なる検討が必要であると判断した。Trpm2数理モデル構築にも着手した。その結果、Trpm2が膜電位を更に脱分極させ、活動電位群発生振動周期の短縮と持続時間を延長させる事が示された。これまで膵β細胞インスリン分泌機構はKATP経路のみで説明されてきたが、上述の本研究成果によりTrpm2経路、TrpC3経路といった新規経路が解明され、新たな創薬ターゲットを見出した。臨床応用への可能性も期待され、本研究成果の意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H28年度、我々はGPR40受容体刺激がTrpC3チャネルを開口させる事でインスリン分泌を促進する事(Sci Rep 2016;6:25912)、生理的濃度のアドレナリンはα2A受容体-cAMP抑制を介してインスリン分泌を抑制すること(Diabetes. 2017 Mar;66(3):699-709.)を報告し、予定よりも早く、十分な成果が得られた。 H29年度はcAMP-EPAC2-Trpm2経路、TrpC3経路の新たな制御物質・調節因子・シグナルの更なる解明に着手し、オキシトシンの背景電流を介したインスリン分泌機序についての検討を実施した。オキシトシンは確かに何らかの背景電流を増強し、インスリン分泌を増強する事が明らかとなった。しかしながら、どのチャネルを介するかまで明らかにする事ができず、シグナルの解明にも至らなかった。グルカゴンでの検討も予定していたが、実施には至らなかった。それらの点で、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き電気生理学的手法を用い、次のⅰ)、ⅱ)を中心に研究を継続する。 ⅰ)cAMP-EPAC2-Trpm2経路、TrpC3経路の新たな制御物質・調節因子・シグナルの解明 ⅱ)インスリン分泌促進物質、抑制物質のTrpに対する相互作用の検討 全体の進行度を考慮しつつ、可能であれば糖尿病モデル動物を用いた検討も開始する。 糖尿病モデル動物には発症機序の異なるモデルが複数存在するため、その選定は容易ではないことが予想される。選定に時間を要する場合はⅰ)、ⅱ)を優先する。
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Causes of Carryover |
糖尿病モデル動物購入費用、膵電図作成費用として予算を確保していたが、実験計画の遅れにより実施できず、次年度に繰り越すこととなった。 平成30年度、主に糖尿病モデル動物購入費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)