2016 Fiscal Year Research-status Report
腸管免疫制御による高脂肪食インスリン抵抗性発症予防
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16K19546
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川野 義長 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80571463)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インスリン抵抗性 / 腸管免疫 / マクロファージ / 樹状細胞 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究者は本年度に腸管上皮特異的Ccl2欠損マウス(Vil-Ccl2KO)を用いて、高脂肪食による腸管の慢性炎症が糖代謝を悪化させる可能性を報告した(Kawano. Y 2016 Cell Metabolism)。Vil-Ccl2KOは高脂肪食12週において、同週数高脂肪食負荷したコントロールマウスと比較して、体重に変化はないものの、耐糖能とインスリン抵抗性が改善することを見出した。Vil-Ccl2KOマウスでは、インスリン投与下における脂肪組織と肝臓のAktリン酸化が亢進しており、同部位でのインスリン抵抗性改善が示唆された。またVil-Ccl2KOはコントロールと比較して、大腸炎症性マクロファージの浸潤が有意に低下していた。さらに門脈内のIL18濃度が有意に低下し、大腸Claudin-1発現の増加および門脈LPSの改善を認め、インスリン抵抗性改善の一因であることが示唆された。これらの結果より、高脂肪食に伴う大腸マクロファージ浸潤が、全身の糖代謝調節に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 現在はさらに腸管樹状細胞Nlrp10と腸管T細胞Foxoの役割の検討を進めている。これまでの解析で、CD11cNlrp10KOの大腸では抑制型Treg細胞が減少しており、高脂肪食下におけるインスリン抵抗性および耐糖能が悪化した。CD4陽性T細胞特異的Foxo1-/-Foxo3-/+欠損マウスは、高脂肪食負荷下において、小腸の抑制型Tregが増加しており、体重と耐糖能が改善した。これらより、高脂肪食下においてCD11c細胞Nlrp10およびCD4陽性T細胞Foxoが、腸管の炎症を何らかのメカニズムで制御し、全身のインスリン感受性を調節する可能性が示唆され、引き続き解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸管上皮Ccl2欠損マウスの解析に関しては、本年度に腸管上皮特異的Ccl2欠損マウス(Vil-Ccl2KO)を用いて、高脂肪食による腸管の慢性炎症が糖代謝を悪化させる可能性を報告してきた(Kawano. Y 2016 Cell Metabolism)。また樹状細胞特異的Nlrp10ノックアウトマウスと。CD4陽性T細胞特異的Foxo1-/-Foxo3-/+欠損マウスの高脂肪食負荷下における代謝表現型の解析に関して、現在、解析している段階である。腹腔内ブドウ糖負荷試験のデータでは、CD11c-Nlrp10KOは高脂肪食12週でコントロールと比較して、体重に差異ないが耐糖能とインスリン抵抗性が有意に悪化した。CD4Foxo1-/-Foxo3-/+KOは高脂肪食12週でコントロールと比較して体重および耐糖能・インスリン抵抗性が有意に改善した。通常食飼育においては両マウスともにコントロールと比較して代謝表現型に差異を認めないことから考えると、樹状細胞Nlrp10とCD4陽性T細胞Foxoは高脂肪食負荷下において、何らかの病態生理学的な役割を担う可能性が示唆された。両マウスにおける腸管免疫環境への影響を検討すると、CD11cNlrp10KOにおいては、コントロールと比較し大腸Tregの遺伝子発現が有意に低下し、CD4Foxo1-/-Foxo3-/+KOマウスは、コントロールと比較し小腸Tregの遺伝子発現が有意に増加した。腸管においてTregの数や割合が変化する事で、全身のインスリン感受性臓器や全身の糖・エネルギー代謝にどのような影響を与えている可能性が示唆されるが、そのメカニズムは現時点では明らかにできておらず、今後における本研究の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を遂行する上での課題は、樹状細胞特異的Nlrp10ノックアウトマウスとCD4陽性T細胞特異的Foxo1-/-Foxo3-/+欠損マウスにおいて認めた糖代謝の変化を説明しうる、腸管免疫環境の変化と全身臓器におけるインスリン感受性の調節機構の解明を行うことである。近年の報告から、腸管免疫と密接した関係にある、腸内細菌、腸内胆汁酸、短鎖脂肪酸、門脈内炎症性サイトカイン、腸管バリア機能、便中IgAと全身の糖・エネルギー代謝の関係が注目されており、本研究課題においてもまずはそれらの因子を中心に解析を進めていく予定である。その過程で、腸管免疫細胞由来の新規インスリン感受性因子の同定を図る。さらに両マウスにおける腸管免疫環境の変化を、遺伝子発現解析だけでなくFACSおよび免疫組織学的解析による条件の検討を進め、大腸・小腸・パイエル盤・腸間膜リンパ節・各種インスリン感受性臓器の所属リンパ節で各種腸管免疫細胞の解析を進めていく。Nlrp10に関しては、腸管樹状細胞特異的に過剰発現させた場合に、欠損マウスと逆に高脂肪食負荷における糖代謝を改善させうるのかを確かめるために、新たに過剰発現ベクターを作成し、CD11c陽性樹状細胞特異的Nlrp10過剰発現マウスを作製し、代謝表現型の解析を行う。また、樹状細胞特異的Nlrp10ノックアウトマウスとCD4陽性T細胞特異的Foxo1-/-Foxo3-/+欠損マウスにおいて腸内細菌叢に有意な変化を認めた場合には無菌マウスへの糞便移植実験を行う。また樹状細胞Nlrp10、CD4陽性T細胞Foxoの制御遺伝子および、それらの分子の活性制御機構に関しても解析を進め、高脂肪食インスリン抵抗性発症の新規の治療標的分子の同定を行う。
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Causes of Carryover |
Vil-Ccl2KOマウスの解析および論文の作製の進行具合が当初の見込みより順調であった事、および学会活動費用が当初の見込みより使用額が少なかったことが主な要因であったと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額に関しては、Nlro10KOとCD4Foxo1,3遺伝子改変マウスのプロジェクトの実験経費および、同プロジェクトの学会参加費用として使用を計画している。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Colonic Pro-inflammatory Macrophages Cause Insulin Resistance in an Intestinal Ccl2/Ccr2-dependent Manner. Cell Metabolism, 24:2016, 295-3102016
Author(s)
Kawano Y, Nakae J, Watanabe N, Kikuchi T, Tateya S, Tamori Y, Kaneko M, Abe T, Onodera M, Itoh H. .
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Journal Title
Cell Metabolism, 24:2016
Volume: 24
Pages: 295-310
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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