2016 Fiscal Year Research-status Report
肥満減量手術モデルラットの消化管から分泌される機能性タンパク質の生理機能の解明
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16K19553
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸山 圭介 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (20612386)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肥満減量手術 / 減量手術モデルラット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は肥満減量手術モデルラットを確立して、減量手術における体重減少、糖代謝改善に寄与する内分泌的メカニズムの解明を主たる目的とする。 本年度は、確立した減量手術(RYGB)モデルラットの表現型解析を進めた。予備検討において、RYGBラットは体重減少を認めていた。しかし、同時に摂食量の減少も認めた。そこで本年度、RYGB群の摂食量に合わせたペアフェド群を設け、体重変化及び自由摂食条件下における血糖値、インスリン値の変化を13週間にわたって観察した。その結果、RYGB群の体重は、術後長期にわたりSham群の約90%を維持した。さらに、自由摂食条件下における血糖値を測定したところ、RYGB群の血糖値が、Sham群と比べて低下しており、血糖改善効果があるように考えられた。一方、ペアフェド群の体重変化及び血糖値の変化を調べたところ、ペアフェド群の体重はSham群よりも低く、RYGB群のそれと同程度を示した。さらに、血糖値に関しても、ペアフェド群はRYGB群と同程度に低下していた。つまり、RYGBラットの体重減少及び血糖改善効果は摂食量の減少が要因であることが明らかになった。しかし、血中インスリン値については、RYGB群の血中インスリン値が、Sham群やペアフェド群のそれよりも高い値を示した。次に、各群の膵臓をサンプリングし、生化学的、形態学的解析を進めた。その結果、RYGB群の膵臓組織重量が他の群と比較して、増加していた。しかし、インスリン含有量に変化はなく、形態学的解析においてもインスリン陽性反応を示すβ細胞の総面積にも変化は認められなかった。 本年度の成果より、我々が確立したRYGBラットにおける体重減少及び血糖改善効果に関しては、摂食量の減少に起因することが明らかとなった。一方で、インスリン分泌機能については、RYGBラットに特異的な変化がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、術後長期間観察が可能なRYGBモデルラットを確立することができ、当初の計画通りに表現型の解析に取り組むことができた。RYGBモデルラットの体重減少や血糖改善効果に関しては、摂食量の低下に依存したものであったが、一方で、インスリン分泌機能については、RYGBラットに特異的な変化がある可能性を見出すことができた。 また、RYGBモデルラットの膵臓について、抗インスリン抗体、抗グルカゴン抗体、抗Ki-67抗体を用いた免疫染色による形態学的解析も、計画通りに実施することができた。RYGBモデルラットの膵臓に特異な変化は認められなかったものの、今後、インスリン分泌機能に着目した解析を中心に進めていく予定であり、当初計画していた通り、糖負荷試験を行って血糖値、血中インスリン濃度を測り、耐糖能を評価する。糖負荷試験などは当初計画よりも遅れたものの、現在実施に向けてモデルラットを準備している。 また、当初計画していたRNA-Seq解析による、RYGBラットの消化管における遺伝子発現の網羅的解析についても、現在もデータ解析を進めているところであり、順調に進行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に記載した通り、本年度はRYGBモデルラットの確立と表現型の解析に取り組んだ。その結果、インスリン分泌機能について、RYGBラットに特異的な変化がある可能性を見出すことができた。そこで、来年度は糖代謝やインスリン分泌に着目した解析を進めていく。当初計画していた通り、糖負荷試験を行って血糖値、血中インスリン濃度を測り、耐糖能を評価する。また、これらの実験においては既知の消化管ペプチドホルモンの血中濃度を測定する。 さらに、現在も進めているが、既に実施したRYGBラット及びShamオペラットの消化管におけるRNA-Seq解析をもとに、RYGBラットの消化管においてのみ発現が変化している遺伝子をデータから抽出する。抽出された遺伝子に関しては、消化管を数cmごとにサンプリングして、Real-time PCRによって発現分布と発現の詳細な変化を調べる。可能であれば、候補遺伝子がコードするタンパク質の抗体を用いて免疫染色を行い、消化管における局在を調べる。 また、当初計画していた膵β細胞株を用いたin vitroアッセイ系の確立についても、予定通り実施するつもりである。現在、細胞内Ca2+濃度の変化を指標としたアッセイ系の確立に向けた予備検討を既に進めている。
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Causes of Carryover |
本年度は主にモデルラットの確立と表現型解析を計画していたが、糖負荷試験解析が計画よりも若干遅れたため、必要な試薬・消耗品の購入を来年度に繰り越した。また、形態学的解析に関して、当初予定したよりも試薬・消耗品の購入に研究費を必要としなかった。一方で来年度実施予定の遺伝子発現解析及びin vitroアッセイ系の確立に、予想していたよりも試薬・消耗品の購入に研究費を必要する可能性がでてきたため、形態学的解析において使用しなかった研究費を繰り越して充当することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先の項目において記載した通り、繰り越した分に関しては遅れていた糖負荷試験解析と、必要経費の増加が予想される遺伝子発現解析及びin vitroアッセイ系の確立に必要な試薬・消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)