2016 Fiscal Year Research-status Report
疾患特異的iPS細胞を用いた血球分化におけるGATA2の機能解析
Project/Area Number |
16K19564
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
八田 俊介 東北大学, 大学病院, 特任助手 (80772194)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | GATA2 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度までの研究実績としては以下のとおりである。 ①MonoMAC症候群の患者から採取した骨髄血を用いてFicoll分離法によって単核球を分離し、患者と同じGATA2変異を有するMSCを作製した。 ②樹立したMSC にOCT3/4、SOX2、KLF4、LIN28、GLIS1、L-MYC、p53-shRNAを組み込んだエピソーマルベクターをエレクトロポレーションで導入しiPS細胞を樹立した。未分化性については、Oct3/4、Nanogなどの未分化マーカーを用いて免疫染色を行った、また多分化能についてはiPS細胞をNSGマウスの精巣に注入し、奇形腫を形成させ、ヘマトキシリン・エオジン染色で三胚葉への分化能を確認した。 ③樹立したiPS細胞からDNAを回収後シークエンスにて、MonoMAC症候群の患者骨髄血と同じGATA2変異を有していることを確認した。現在までに10個のiPS細胞株についてシークエンスを行い、全てにおいてMonoMAC症候群患者と同じGATA2変異を有することを確認した。樹立したiPS細胞株に対して核型解析を行ったが、提出した全ての細胞株で染色体変異が存在した。現在までに正常核型を有するGATA2変異iPS細胞の樹立には至っていない。 ④同様の方法で樹立し正常核型を確認した健常人由来iPS細胞を用いて、OP9、C3H10T1/2との共培養、無血清単層培養法を用いてヒトiPS細胞から造血系細胞への効率的な血球分化プロトコールについて、培養条件を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本実験は、GATA2変異を有するiPS細胞を樹立し、リンパ球、顆粒球、樹状細胞などに再分化させ、GATA2の各血球分化での役割を明らかにすることを目的としている。GATA2変異を有するMSCからiPS細胞の樹立は成功したが、得られたiPS細胞株の核型解析を施行した結果、現時点では正常核型は得られていない。ヒトES細胞やiPS細胞を長期間in vitroで維持していると遺伝的子変異が蓄積することが知られており、染色体異常が生じると異常増殖を認めたり、特定の細胞への分化が阻害されるという報告もある。今回樹立したGATA2変異iPS細胞株のうち2個の細胞株で、継代中に明らかな形態異常を有する細胞が出現した。また、長期間継代を繰り返しても形態異常が生じない細胞株で染色体解析を施行したが、全ての細胞株で染色体異常を有していた。 MonoMAC症候群はMDS/AMLを多発する複数の家系の解析から発見された疾患であり、発症メカニズムは不明であるが、GATA2の先天性変異による造血不全・免疫不全の経過中に遺伝子の変異が蓄積し、発がんへと進展すると考えられている。MSCの段階で染色体変異が生じている可能性も考慮したが、染色体異常は同一ではなく、20個中18個が正常核型を有している細胞株も存在していることから、iPS細胞の継代中に染色体変異が生じたと考えられた。同様の方法で樹立した健常人由来iPS細胞を長期間培養しても明らかな形態異常を生じることはなく、正常核型も得られたことから、GATA2変異iPS細胞が染色体変異を獲得しやすい可能性が考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は以下のように研究を推進していく予定である。 ①既に得られているGATA2変異が確認されたiPS細胞株のうち、染色体解析を行っていない残りの細胞株の核型解析を行う。既に染色体変異が確認された細胞株でも継代数の少ない細胞株では染色体変異が生じていない可能性もあるため、再度核型解析を行う。また、ストックしてあるGATA2変異MSCに再度初期化因子を導入して、iPS細胞を樹立することも検討する。 ②健常人由来iPS細胞を用いて造血系細胞への効率的な分化の検討を行った結果、C3H10T1/2との共培養による方法が最も安定していた。正常核型のGATA2変異iPS細胞が得られれば、既報のプロトコールを参考にしながらGATA2変異iPS細胞と健常人iPS細胞を顆粒球、NK細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、樹状細胞に分化させ、選択的な血球分化の異常の有無を確認する。また、GATA2変異iPS細胞から分化した各血球をそれぞれの血球特異的なMicrobeads kitを用いて分離後、全RNAを抽出しマイクロアレイ解析を行い、健常人コントロールと比較しながら、変動遺伝子を抽出し各血球分化に関連のある遺伝子を検討していく。 ③マイクロアレイ解析でGATA2制御下にあると考えられた遺伝子について、CRISPR-Cas9システムによりGATA2変異iPS細胞へのノックイン、あるいは健常人iPS細胞のノックダウンを行いながら遺伝子機能について解析を行う。
|
Causes of Carryover |
物品の納品の遅延によって生じたものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品の納品に必要な経費として、平成29年度請求額と合わせて使用する予定である。
|
-
-
[Journal Article] Impact of TET2 deficiency on iron metabolism in erythroblasts2017
Author(s)
Inokura K, Fujiwara T, Saito K, Iino T, Hatta S, Okitsu Y, Fukuhara N, Onishi Y, Ishizawa K, Shimoda K, Harigae H.
-
Journal Title
Experimental Hematology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-