2016 Fiscal Year Research-status Report
新規DDX41遺伝子変異による骨髄系腫瘍の発症メカニズムの解明
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16K19574
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
昆 彩奈 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (20772403)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / 新規遺伝子変異 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
最近我々の研究グループでは、成人発症の家族性骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病(Familial-MDS/AML)の全エキソン解析を通じて、新規のDDX41遺伝子の胚細胞・体細胞変異を報告した。DEAD-boxファミリーのRNAヘリケースをコードするDDX41遺伝子の胚細胞・体細胞変異は、少なくとも一部ではRNAスプライシングの異常を介して病態に関与すると予想されるが、その機能的意義は未知の新しいクラスの遺伝子変異である。 さらに我々は、本邦およびアジア諸国のMDS患者における標的シーケンスを通じて、アジア人種に共通して認められる胚細胞変異を新たに発見した。興味深いことに、これらの胚細胞変異は、欧米より報告されたものとは独立のものであり、DDX41の変異が白色人種と黄色人種が分離した後に獲得されたものであると確認された。また、多くの胚細胞変異はフレームシフト変異であり、機能喪失をもたらすと考えられた。 これらの異なるDDX41変異アレルの機能的意義を検討するため、アジアおよび欧米で高頻度に認められたDDX41変異について、HeLa細胞を用いて変異体を強制発現させたのちに、共免疫沈降により結合タンパクとの関係を調べたところ、スプライシング因子との結合性が各変異によって異なっていることを明らかにすることができた。 さらに、Ddx41遺伝子の条件的ノックアウトマウスと、DDX41遺伝子にホットスポット変異として認められる体細胞変異 (p.R525H)アレルの条件的ノックインマウスとを構築したのちに交配させ、家族性MDS/AMLで認められる遺伝子変異マウスモデルを作成することができた。造血器における表現型の探索や、RNAシーケンス解析による発現解析およびRNAスプライシング異常の検討を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家族性MDS/AMLおよび孤発性MDSにて同定されたDDX41遺伝子変異についての遺伝子改変マウスの作成(Ddx41遺伝子の条件的欠失マウスおよびDdx41 R525H変異条件的ノックインマウス)と造血系における表現型の解析は予定通り順調に進展している。DDX41変異アレルを導入したヒト白血病細胞株を用いた機能解析については、アジア人および欧米人でそれぞれ特徴的にみとめられるDDX41 p.A500fs胚細胞変異およびp.D140fs胚細胞変異、また人種を超えて共通してみとめられるp.R525H体細胞変異について変異アレルを導入したヒト白血病細胞株を樹立し、スプライシング因子との結合性が変化することを示すことができ、予定通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に進めたDDX41遺伝子変異のマウスモデルや白血病細胞株を用いて、生化学的手法およびRNAシーケンスなどの網羅的な解析を通じて、DDX41遺伝子変異が骨髄系腫瘍発症において果たす生物学的・分子学的機能に迫っていく方針である。最近、スプライシング因子変異を有するMDSにおいて、スプライシング阻害剤の投与により腫瘍抑制効果があることが報告されており、DDX41遺伝子の変異をもつ症例においても有効である可能性も期待される。これらの知見により、MDSの病態の理解、治療戦略の改善、患者予後の改善に資するような研究の展開を目指したい。
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[Journal Article] Somatic PHF6 mutations in 1760 cases with various myeloid neoplasms.2016
Author(s)
Mori T, Nagata Y, Makishima H, Sanada M, Shiozawa Y, Kon A, Yoshizato T, Sato-Otsubo A, Kataoka K, Shiraishi Y, Chiba K, Tanaka H, Ishiyama K, Miyawaki S, Mori H, Nakamaki T, Kihara R, Kiyoi H, Koeffler HP, Shih L-Y, Miyano S, Naoe T, Haferlach C, Kern W, Haferlach T, Ogawa S and Yoshida K
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Journal Title
Leukemia
Volume: 30
Pages: 2270-2273
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] The biological characterization of Srsf2 P95H mutation in the pathogenesis of myelodysplasia2016
Author(s)
Ayana Kon, Satoshi Yamazaki, Yusuke Shiozawa, Keisuke Kataoka, Yasunori Ota, Maiko Morita, Tetsuichi Yoshizato, Masashi Sanada, Kenichi Yoshida, Hideki Makisima, Yasuhito Nanya, Shinichi Kotani, June Takeda, Yosaku Watatani, Yotaro Ochi, Manabu Nakayama, Haruhiko Koseki, Hiromitsu Nakauchi, Seishi Ogawa
Organizer
The 78th Annual Meeting of the Japanese Society of Hematology
Place of Presentation
Yokohama, Kanagawa, Japan
Year and Date
2016-10-13 – 2016-10-13
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