2017 Fiscal Year Research-status Report
造血幹細胞特異的エンハンサーの同定による白血病病態基盤の解明
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16K19579
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
横溝 貴子 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別研究員(PD・RPD) (40636867)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エンハンサー / 白血病 / RUNX3 / MYC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は造血機能に必須である転写因子群の発現制御機構を理解するために、細胞特異的なステムセル・エンハンサー領域を独自の効率的なアプローチによって同定するとともに、正常及び白血病幹細胞における必須転写因子群の活性化エンハンサーの生物学的機能を解明する。現在までに共同研究者により造血に重要な転写因子RUNX1およびRUNX3の造血細胞特異的エンハンサーの同定を終了している。RUNX1の機能喪失変異は急性白血病の発症に関与することがこれまでに報告されている。一方RUNX3は、その変異や転座は白血病において同定されていないが、病期進行に伴うRUNX3の発現上昇が骨髄異形成症候群(MDS)および急性骨髄性白血病(AML)患者において観察されている。本研究ではこれまでに骨髄増殖性腫瘍(MPN)、MDSやAMLにて機能喪失型変異を認めるDNA脱メチル化酵素TET2変異造血幹細胞にRUNX3を過剰発現させたMDS/AMLモデルマウスを新規に作製した。このRUNX3過剰発現LSK細胞では、がん遺伝子であるMycの標的遺伝子の発現が上昇していることがRNAシーケンスにより明らかとなり、RUNX3の過剰発現によりMycが活性化することが白血病幹細胞の発生に結びつくものと推察される。また、CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術により、MDS白血病細胞株においてRUNX3エンハンサーが細胞の生存に必須であることを明らかにした。今後はChIPシーケンスなどにより病態進展に伴うRUNX3発現上昇のメカニズム解明を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では造血機能に必須な転写因子群の発現制御機構理解のために、独自のアプローチで同定した細胞特異的なステムセル・エンハンサー領域の解析を進めている。先行しているRUNX3の造血細胞特異的エンハンサーの解析が現在中心となっているが、RUNX3は白血病患者において病期進行に伴う発現上昇が観察されているなど、白血病発症および進行に伴いエンハンサーの変遷が予想される因子である。RUNX3エンハンサーはRUNX3を高発現する白血病細胞株において生存に必須な領域であることが明らかとなったほか、RUNX3の発現上昇ががん遺伝子Mycの標的遺伝子群の活性化を誘導するなど、白血病幹細胞で重要な機能を果たしているものと考えられる。RUNX3エンハンサーの白血病発症に伴う活性化機構の解明は本研究課題である正常および白血病幹細胞における必須転写因子群の活性化エンハンサーの生物学的機能の解明の一端を担えるものと期待し、上記のように評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
造血機能に必須である転写因子群の発現制御機構を理解するために、正常および白血病幹細胞における必須転写因子群の活性化エンハンサーの生物学的機能を解明する。まずは先行しているRUNX3の白血病幹細胞におけるエンハンサーの活性化機構をヒストンを標的としたChIPシーケンスの系などにより解析を進めていく。また、そのほかの造血機能に必須な転写因子群のステムセル・エンハンサー領域の同定および機能解析も同時に進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)