2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンシングによる造血幹細胞移植後再発腫瘍のHLAアリル欠損解析
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16K19588
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
青山 泰之 東海大学, 医学部, 助教 (50648475)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | LOH / 次世代シーケンシング / SS-SBT法 / HLA遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
HLA不一致の同種造血幹細胞移植(Allo-HSCT)後の再発時に,レシピエント固有のHLA消失(LOH: loss of heterozygosty)症例が報告されているが,その機序は明らかにされていない.Allo-HSCTの移植後再発は予後が極めて悪いことで知られており,LOHの機序解明は,再発予防法の開発への重要な情報となると考える.そこで,LOHが腫瘍の免疫応答回避に関与しているという仮説のもと, HLA不一致allo-HSCT後の再発症例に対し,LOHの経時的変化を検証することを目的とした.解析法は,新たなLOH検索法となり得るSS-SBT法を選択した.本法は,従来法のSNPやマイクロサテライト解析(MS)では実現できなかった,LOHを生じたHLAの定性的特定およびLOHクローンの定量的検出が期待できる. 今年度は,HLA一致・不一致移植における再発時のHLA領域LOHがSS-SBT法で検出可能かを検証した.複数再発18症例の移植前および再発時のDNAを用いた.方法は,(1)HLA領域内の8マーカーによるMS解析で,LOH症例を特定し,(2)LOHおよび非LOHの計5症例に対しSS-SBT解析を実施した. 結果,MS解析によりLOHが認められた2症例は,SS-SBT解析においてもLOHが確認され,同時に消失したレシピエント固有アリルを特定した.HLA一致症例においては,ヘテロにおけるアリルリード数の比率に偏りが認められ,片側アリルがLOHを生じた可能性が示唆された.また,LOH有無の特定率は,MS解析では33%であるのに対し,SS-SBT法では100%であった。 以上により,本法がAllo-HSCTのHLA不一致のみならず一致症例においても新規LOH解析ツールとして有用であることが明らかになった.更に,従来法に比べ,より高確率でLOHの検出が可能であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的として掲げた,HLA一致および不一致Allo-HSCT再発時におけるHLA領域のLOH検出ツールとしてSS-SBT法が活用できるかの検証を平成28年度の研究でおおむね達成している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的として掲げた,HLA一致および不一致Allo-HSCT再発時におけるHLA領域のLOH検出ツールとしてSS-SBT法が活用できるかの検証を平成28年度の研究で達成した. 平成29年度は,研究計画に従い,以下の項目を実施することを目的とした.(1)再発に至るまでの経時的なLOH変化,および(2)再々発症例におけるLOH変化を観察するために,LOHを確認した2症例の複数検体(移植前,1回目移植後,1回目再発時,2回目移植前,2回目移植後,2回目再発時)に対し,有用性を確認したSS-SBT法によるLOH解析および定量性の検討を実施する.得られた解析情報と臨床データを基に,腫瘍がLOHを獲得したことによりドナーからの免疫反応を回避している可能性を検証する. 更に,上記の対極仮説として,(3)LOHを有するクローンは移植後に獲得されるのではなく,白血病発症時(移植前)に既に存在していた可能性を検証する必要がある.そこで,急性骨髄性白血病,急性リンパ性白血病を対象に複数症例の初発時芽球細胞から得たDNAを用いてSS-SBT解析を実施し,LOHの有無を検証する予定である.
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