2016 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来細胞障害性T細胞を用いた新規HTLV-1感染症治療法の開発
Project/Area Number |
16K19590
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
手塚 健太 国立感染症研究所, 血液・安全性研究部, 研究員 (10754533)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | HTLV-1 / 発症高リスク群 / Tax特異的CTL / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
体外において増幅した患者自身の抗原特異的CTLを用いてがんや感染症を治療する試みは、CTLの持つ高い抗原特異性と細胞障害能を利用した効果的な治療法であり、HTLV-1感染症にも有効な細胞療法として期待されている。本研究課題では、①血中プロウイルスロード4%以上の発症高リスク群HTLV-1キャリアにおけるCTL機能を評価し、②iPS細胞を介して初期化・再分化誘導することで抗原特異的CTLを効率的に獲得する。さらに、③獲得したCTLの機能を多方面から評価する。これらを基盤とし、臨床応用可能な新規HTLV-1感染症予防法としての再生CTL療法確立を目指す。本年度においては、高リスク群HTLV-1キャリアを収集し、CTL機能解析を含めたキャリア由来PBMCの性状解析を実施した。検体はJR大阪鉄道病院・血液内科との共同研究により、血中プロウイルスロードが4~20%の検体を合計24検体用いた。まず、治療標的となるCTL機能の低下した検体を明らかにするために、フローサイトメトリーを用いてHTLV-1 Tax特異的CTLの保有率を検討した。次に、HLA-A2あるいはA24アリルを有する検体のうちTax特異的CTLが検出されるものについて、そのエピトープペプチドによって刺激培養し、CTLの細胞増殖能、及びIFN-γの放出能を評価した。その結果、Tax特異的CTLが検出された検体のうち、刺激培養によってもCTLが増殖せず、かつIFN-γの放出能が著減していた検体は1検体であった。対照実験として用いたCMV特異的CTLの機能は全ての検体で異常は観察されなかった。来年度以降、CTLの機能不全が見られた検体についてより詳細に解析し、iPS細胞を介した再生CTL誘導による機能改善を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JR大阪鉄道病院・血液内科との共同研究により、HTLV-1感染症発症高リスク群 (血中プロウイルスロード:4%以上) の安定的な入手経路を構築することに成功した。この共同研究体制により、感染者24人分由来のPBMCを入手し、HTLV-1 Tax特異的CTLの検出及びその機能解析を遂行した。これらの結果に基づき、治療対象検体を選定の上、iPS細胞を介する再生CTL誘導によって、CTL機能が改善可能であるかどうか検討することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き候補となる患者検体の収集を進めつつ、CTLの機能不全が確認された検体について、より詳細な解析を進める。具体的には、センダイウイルスを用いた遺伝子導入法により、同定したTax特異的CTLをiPS細胞へ初期化する。初期化したiPS細胞がCTL特有の抗原特異性を保持しているかどうか、縮重プライマーとマルチプレックスPCR法によるT細胞受容体V(D)J結合領域の配列解析法を用いて評価する。さらに、未分化マーカーを用いた免疫染色法や自己複製能の確認により樹立したiPS細胞の未分化性を評価する。 また、iPS細胞からのCTL誘導について検討を行う。iPS細胞とフィーダー細胞を共培養することで、CD34陽性の造血幹・前駆細胞に分化誘導する。続いて、これらの前駆細胞を異なるフィーダー細胞と共培養することによりT細胞系統へと分化誘導する。さらに、T細胞受容体シグナルを誘起しつつ、非自己PBMCと共培養することでCTL様のCD8 SP T細胞を獲得する。得られたCD8 SP T細胞の活性評価として、Taxペプチドでパルスした標的細胞と共培養した後、テトラマー染色、細胞障害活性の測定、さらにIFN-γの放出能を検討する。これらを通じて、Tax特異的再生CTLとしての機能を評価する。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 平成28年度分についてはほぼ使用済みである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Establishment of a reference material for standardization of the anti-complementary activity test in intravenous immunoglobulin products used in Japan: A collaborative study.2017
Author(s)
Kiyoko Nojima, Kazu Okuma, Masaki Ochiai, Madoka Kuramitsu, Kenta Tezuka, Mieko Ishii, Sadao Ueda, Takashi Miyamoto, Koichiro Kamimura, Enki Kou,
Sanae Uchida, Yoshiharu Watanabe, Yoshiaki Okada, Isao Hamaguchi
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Journal Title
Biologicals
Volume: 46
Pages: 68-73
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Development of a novel dengue virus serotype-specific multiplex real-time reverse transcription-polymerase chain reaction assay for blood screening.2016
Author(s)
Kenta Tezuka, Madoka Kuramitsu, Kazu Okuma, Kiyoko Nojima, Kumiko Araki, Naoya Shinohara, Chieko Matsumoto, Masahiro Satake, Tomohiko Takasaki, Masayuki Saijo, Ichiro Kurane, and Isao Hamaguchi
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Journal Title
Transfusion
Volume: 56
Pages: 3094-100
DOI
Peer Reviewed
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