2016 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫受容体TLR7の活性阻害に基づく新規SLE治療薬の創出
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16K19596
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岡本 直樹 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 研究員 (80727488)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / 自然免疫 / TLR7 / 天然薬物 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ヒト及びマウスにおいて、Toll-like receptor 7(TLR7)の異常活性化が自己免疫疾患の一種である全身性エリテマトーデス(SLE)の発症や増悪に関与することが明らかにされている。SLEの薬物治療は副作用の多いステロイド剤に依存しており、安全かつ有効な治療法は確立されていない。本研究課題では、探索研究にて見出した新規TLR7阻害剤「CB-7」をSLE治療薬として開発するために、以下の4項目の戦略を策定し、実施している。 (1)動物レベルでの有用性評価:①正常マウスにおけるCB-7のTLR7阻害効果、②SLEモデルマウスにおけるCB-7の予防・治療効果を投与経路及び剤形を工夫しながら検討したが、CB-7の明確な効果は認められなかった。 (2)細胞レベルでの有効性評価:①正常マウスまたはSLEモデルマウス由来の免疫細胞(マクロファージ及び樹状細胞)、②健常人またはSLE患者由来の免疫細胞(末梢血単核球及び樹状細胞)において、CB-7はTLR7の活性化によるIL-6及びIFN-αの産生を完全に抑制した。 (3)作用機序の解明:CB-7とTLR7結晶構造とのドッキングシミュレーションの結果、CB-7がTLR7のリガンド結合部位に結合しうることがわかり、共結晶化にも着手した。しかし、等温滴定カロリメトリーを利用してCB-7とTLR7細胞外ドメインとの相互作用解析を行ったが、両者の結合は検出されなかった。 (4)誘導体合成及び構造活性相関の解明:CB-7よりも活性が高く、動物レベルで有効性を示す阻害剤を開発するために、50種類以上の誘導体を創出した。活性評価の結果、複数の誘導体にCB-7と同等またはより高い活性があることを見出した。多数の誘導体の活性評価とシミュレーション解析の結果を互いに参照することで、TLR7阻害作用における化合物の構造活性相関に関して重要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究を実施することができた。特にヒトサンプルを用いた臨床研究においては、計画以上の13名の健常人と59名のSLE患者または非SLE膠原病患者から血液検体を得ることができ、CB-7の明確な有効性を確認した。また、誘導体合成が順調に進み構造活性相関が明らかになってきたことで、構造生物学を基盤とした最適化合成にも着手している。一方、SLEモデルマウスを用いた有用性評価では、CB-7を8週間投与した後に解析を行っているため評価に時間を要しているが、予定よりも早く投与経路や剤形の検討を行うことができた。しかし、良好な結果は得られていない。その原因としては、CB-7の阻害活性では全身性の炎症病態を防ぐために不十分であることや、CB-7の体内動態が不適切であることが考えられる。従って、今後は化合物の構造最適化だけではなく、薬物動態を考慮に入れながら、動物レベルで効果を示す誘導体の創出が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)動物レベルでの有用性評価:SLEモデルマウスを用いた評価を継続して進める。また、動物レベルで効果が弱い原因を探るために、液体クロマトグラフィー質量分析法を利用して、マウスにおけるCB-7の体内動態及び代謝安定性を解析する。 (2)細胞レベルでの有効性評価:臨床研究においては、SLE患者の対照をリウマチ患者に絞り、既に回収した分を含めて両郡で40名分の血液検体を回収し、末梢血単核球におけるCB-7のTLR7阻害効果を検討する。また、末梢血単核球におけるTLR7及びサイトカインの遺伝子発現量と疾患重症度に相関が見られるかどうか、免疫細胞の構成やカルテを参照しながら解析する。 (3)作用機序の解明:CB-7及び誘導体とTLR7の相互作用に関して、より高精度なシミュレーション解析を行うとともに、共結晶化を継続して進める。また、表面プラズモン共鳴法を利用してTLR7細胞外ドメインとの相互作用解析を行う。 (4)誘導体合成及び構造活性相関の解明:これまでに得られた構造活性相関の情報に基づいて、最適化合成を進める。活性評価及び薬物動態解析で良好な結果が得られた誘導体に関しては、大量合成し、動物レベルでの有用性評価を行う。
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Causes of Carryover |
正常マウスを用いた評価に早めに見切りをつけ、繁殖可能なSLEモデルマウスを用いた評価に移行したことで、マウスの購入費を大幅に抑えることができた。ただし、次年度において現在用いているSLEモデルマウスで効果が認められなかった場合、異なるSLEモデルマウスを購入して評価する必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬効評価及び薬物動態解析等の動物実験、細胞の調製及び培養、分子間相互作用解析に必要な試薬及び消耗品に充当する。
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Research Products
(4 results)