2016 Fiscal Year Research-status Report
肺炎マイコプラズマによる肺外疾患発症に関わる肺外移行メカニズムの解明
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16K19619
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
山本 武司 久留米大学, 医学部, 助教 (20632566)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Mycoplasma pneumoniae / 肺外疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
Mycoplasma pneumoniae感染によるマイコプラズマ肺炎は、多彩な合併症、いわゆる肺外疾患を約25%の頻度で伴うことが知られている。肺外疾患には、M. pneumoniaeの肺外責任部位への移行が関与するとされており、この肺外移行において、M. pneumoniaeは傷害された呼吸器上皮の間隙から肺外に移行すると考えられている。しかしながら、上皮の傷害の程度の高い肺炎患者よりも不顕性感染の場合の方が肺外疾患の罹患頻度が高いことから、肺外移行には本菌の病原性機構の積極的な関与が示唆される。 本研究では、肺外疾患への関与が予想される本菌の肺外移行に着目し、当該現象の初期段階である呼吸器の上皮細胞バリアの突破機構を解明することで、肺外疾患の予防や治療に際しての標的候補分子を同定すること目的としている。 平成28年度は、M. pneumoniaeと感染細胞間の相互作用についての検討を行い、次の結果を得た。(1)M. pneumoniaeは感染細胞内で一定期間生存することができる。(2)M. pneumoniaeは感染細胞にCaspase-3の活性化を誘導せず、一部の細胞においてはCaspase-3活性化の抑制作用を示す。(3)M. pneumoniae感染(MOI=10、24時間感染)は各種上皮細胞に対して明らかな細胞傷害性を示さない。(4)M. pneumoniae感染は、細胞単層の経上皮電気抵抗値およびFITC-Dextran70の細胞単層通過に影響しない。 以上の結果から、M. pneumoniaeは呼吸器上皮を傷害し細胞間隙を通過する(Paracellular経路)のではなく、上皮細胞内に侵入後、細胞内を通過する(Transcellular経路)か、あるいは食細胞の食胞内等に取り込まれた状態で呼吸器上皮を通過する(Trojan-horse経路)ことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究実施計画に記載した通りに研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、まず、前年度に使用したものより低分子のFITC-Dextran4を用いて、M. pneumoniaeの細胞単層通過におけるParacellular経路の関与についての再評価を行う。 同実験にてParacellular経路の関与が否定された場合、以下の検討を行う。(1)M. pneumoniaeは好中球に取り込まれた状態で生存できるか。(2)M. pneumoniaeは好中球の生存期間を制御できるか。(3)M. pneumoniaeの上皮細胞侵入にはどのようなシグナル分子が関与するか。(4)M. pneumoniaeの上皮細胞侵入及び上皮細胞通過に本菌の接着・運動因子は関与するか。 また、前年度の解析から、M. pneumoniaeが感染上皮細胞に明らかな細胞傷害性を示さなかったことから、本菌の細胞傷害性因子について、その産生量や上皮細胞の抵抗性について評価・検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
おおむね予定通りに助成金を使用したが、納入金額と当初の見積もりに差があったため、少額の残余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残余は次年度の試薬購入費(物品費)に充てる予定である。
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