2017 Fiscal Year Research-status Report
肺炎マイコプラズマによる肺外疾患発症に関わる肺外移行メカニズムの解明
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16K19619
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
山本 武司 久留米大学, 医学部, 助教 (20632566)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | M. pneumoniae / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の解析でM. pneumoniae感染は細胞単層の経上皮電気抵抗値およびFITC-Dextran70の細胞単層通過に影響しないという実験成績が得られたことから、M. pneumoniaeの細胞単層通過にはparacellular経路は関与しないと予想していたが、最近、他の研究グループよりM. pneumoniaeが細胞単層の破壊を伴わずにparacellular経路にて細胞単層を通過するとの報告があった(Prince OA et al., Cell Microbiol. 2018)。そこでM. pneumoniaeがどのようにして細胞単層の完全性を維持したまま同単層を通過するのかについて検討を行うことにした。 M. pneumoniaeは過酸化水素を産生することで、感染細胞を傷害することが知られている。そこで、平成29年度はM. pneumoniaeがこの過酸化水素の産生に伴う感染細胞の破壊を抑制するのではないかと考え、これについて詳細な解析を行い次の結果を得た。 (1)M. pneumoniaeと過酸化水素はともに細胞のDNAを傷害する。(2)過酸化水素は上皮細胞を培養プレート表面から剥離させるが、M. pneumoniae感染はこれを低下させる。(3)過酸化水素による細胞の剥離はカスパーゼ阻害薬であるZ-VAD-FMKによって抑制されない。(4)過酸化水素による細胞の剥離はLDHリリースを伴い、M. pneumoniae感染はこれを低下させる。 以上の結果から、M. pneumoniaeは過酸化水素誘導性のDNAダメージに基づくネクローシス様細胞死を制御することで、気道上皮の完全性に影響を与えずに細胞間隙を通過し、肺外に移行する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他の研究グループの報告から、予想とは異なる経路でM. pneumoniaeが細胞単層を通過することが明かとなったが、M. pneumoniaeと感染細胞の相互作用についての詳細な解析から発展的なデータが得られており、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、過酸化水素誘導性の細胞死の詳細な解析とM. pneumoniaeによる同細胞死の抑制機構について解析を行う。過酸化水素誘導性の細胞死がネクローシス様の細胞死であったことから、(1)necroptosisとparthanatosの阻害薬処理によって過酸化水素誘導性の細胞死が抑制されるか、(2)過酸化水素刺激によってこれらの細胞死に特徴的なシグナルの活性化が認められるか、(3)M. pneumoniae感染が同シグナルの活性化を抑制するかについて調べる予定である。また、同解析によって同定されることが見込まれるシグナル分子群が、実際にM. pneumoniaeの細胞単層の通過に関与するかどうかについても併せて評価を行う。
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Causes of Carryover |
他の研究グループから関連する論文が発表されたため、平成29年度はその検証と関連する現象の詳細な解析を行った。そのため、当初予定していた消耗品等の購入を一部取りやめており、結果として交付金に残余が生じた。次年度はM. pneumoniaeの細胞単層通過における感染細胞死について解析を行う予定であり、残余金は同解析に必要な試薬キット類の購入費用に充てる。
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