2017 Fiscal Year Research-status Report
トガウイルスのゲノム複製機構の解明と抗ウイルス薬開発の基盤的研究
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16K19620
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
坂田 真史 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 主任研究官 (20600547)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トガウイルス / 風疹ウイルス / ゲノム複製機構 / 宿主因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はトガウイルスのゲノム複製機構に関与する宿主因子を明らかにすること、その作用機序からトガウイルス感染症に対する治療薬開発の基盤を得ることを目的にする。昨年度までに風疹ウイルスレプリコン細胞と膜輸送並びに細胞骨格因子のsiRNAライブラリーとその特異的阻害剤を用いてゲノム複製に関与する候補宿主因子を複数決定した。本年度は候補因子の一つについて、1)感染性ウイルス産生への影響、2)ウイルスタンパク質との相互作用、3)ウイルスタンパク質の機能への影響を複数のウイルスについて詳細に解析した。1)については、複数のトガウイルスを各々細胞へ感染させた後、候補因子の特異的阻害剤を処理して、培養上清中のウイルス力価の変動を測定した。用いた全てのウイルス種について、阻害剤の濃度依存的に培養上清中のウイルス力価が数百から数万倍低下することを確認した。2)については、培養細胞へ候補因子とウイルスタンパク質を強制発現させた後、その細胞溶解液を用いて共免疫沈降実験を行って検討した。その結果、候補因子がゲノム複製を担う特定のウイルスタンパク質と相互作用することを確認した。3)相互作用が認められたウイルスタンパク質が酵素活性を有していたことから、阻害剤によるウイルスタンパク質の酵素活性変化を間接的に検討した。その結果、阻害剤の濃度依存的に酵素活性が低下することを確認した。これらの結果から、候補因子はウイルスタンパク質が機能的になるために重要であることが示唆された。また、阻害剤によりウイルス産生が著しく抑制されることから、この宿主因子とウイルスタンパク質の相互作用機序を標的としたウイルス阻害剤の開発が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はsiRNAライブラリーを用いて風疹ウイルスのゲノム複製に関与する複数の候補宿主因子の選定を行った。本年度は、その候補因子について、他のトガウイルス感染への影響、更にウイルス感染に寄与する分子機構について詳細な解析を行った。これらの結果より平成29年度に予定していた候補因子がトガウイルスのゲノム複製へ関与する分子機構について、一定の結果を出した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析により、トガウイルスのゲノム複製に関与する宿主因子の一つを同定したと考えている。平成30年度はこれらの結果を纏めて専門誌に論文を投稿し、受理を得ること、更に残っている候補因子についても同様の解析を進めることを予定している。
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Causes of Carryover |
研究が予定より進捗したため、前倒し申請を行った。全額を使い切らなかったため、次年度使用額が発生した。研究計画は概ね順調であるため、平成30年度の研究計画に則して使用する。
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