2016 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア遺伝子発現不全に伴う新たな髄鞘化障害疾患概念の提唱
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16K19625
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市野井 那津子 東北大学, 大学病院, 特任助手 (40509402)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低分子RNA / 髄鞘化障害 / 酸素消費速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
先天性大脳白質形成不全症は髄鞘化障害を呈する疾患群であり、その遺伝要因は非常に多様である。本疾患群の一家系で認められた新規疾患候補遺伝子は、ミトコンドリア内への低分子RNA輸送に関連する。本研究では、ミトコンドリア内低分子RNA減少と髄鞘化障害との関連性を明らかにすることを目的とする。 平成28年度は、第一に、患者におけるミトコンドリア内低分子RNA減少の有無について検証した。患者およびコントロールの線維芽細胞からミトコンドリア画分を抽出し、放射性同位元素でラベル化した低分子RNAのインポートアッセイを行った。その結果、コントロールに比べて患者はミトコンドリア内低分子RNAが低下していることを示しえた。候補遺伝子変異によって、ミトコンドリアmRNAのスプライシング異常を来すことも予想されたため、その有無をRT-PCRで確認したところ、患者とコントロール間での差異は認めなかった。 第二に、動物モデルにおける表現型解析を試みた。CRISPR/Cas9システムを用いて作製したノックアウトマウスは早期の胎生致死であった。胎生致死を回避するため、本家系で同定したミスセンス変異のノックインマウス作製を引き続き行っている。 第三に、患者のミトコンドリア機能について、これまでと異なる方法を用いて再確認した。患者およびコントロール線維芽細胞の酸素消費量をExtracellular Flux Analyzerにより解析した。患者は、コントロールよりも酸素消費速度が低下しており、ミトコンドリア機能障害が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア内低分子RNA減少の検証を患者およびコントロール細胞を用いて行うことができた。動物モデルに関しては、ノックアウトマウスは早期の胎生致死であることを確認した。ノックインマウス作製を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ノックインマウス作製を継続し、組織学的解析により髄鞘化の評価を行う。また、病態液性制御学分野の支援を受け、新規のミトコンドリア病治療薬を用いた解析を行う。患者線維芽細胞では、ミトコンドリア病治療薬によりミトコンドリア機能回復が示されているため、モデルマウスへの投薬による表現型解析を進める。
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Causes of Carryover |
今年度の研究を効率的に進め、消耗品購入や実験動物飼育、情報収集のための学会参加等により消費した。ノックインマウスが未作製であり、組織学的解析を進めることができなかったため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に計画している研究および共同研究先との研究推進を行うため、組織学的解析に必要な試薬類も含めた消耗品の購入や、実験動物飼育継続、学会参加などにより計画的に使用する。
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