2016 Fiscal Year Research-status Report
Ph染色体陽性ALLに対するLenalidomideを用いた新規治療法の開発
Project/Area Number |
16K19635
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
原間 大輔 山梨大学, 医学部附属病院, 医員 (10774078)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 急性リンパ性白血病 / フィラデルフィア染色体 / IKZF1 / 新規治療法 / レナリドミド |
Outline of Annual Research Achievements |
フィラデルフィア染色体陽性急性(Ph+)急性リンパ性白血病(ALL)は、Imatinib(IM)の部分的な効果を認めるものの、未だに予後不良な疾患である。Lenalidomide(LEN)は、多発性骨髄腫などの血液腫瘍に対する抗腫瘍効果を持つが、ALLを対象とした報告はない。本研究では、LENのPh+ALLに対する抗腫瘍効果をメカニズムも含め判定し、新規治療法樹立を目指すことを目的とする。 これまでに、研究計画に基づいて、1,ALL細胞株に対する抗腫瘍効果の確認、2,抗腫瘍効果のメカニズムの探索、3,IKZFとの関連、4,白血病モデルマウスに対する効果確認の4点に対して研究を進めてきた。1,一部のPh+ALL細胞株ではLENの存在下で細胞活性の低下や、細胞死が誘導され、それらの効果はIMの共存在下でより増強された。2,LEN、IMの存在下での細胞死誘導メカニズムとして、アポトーシス誘導の主因子であるcaspase-3の活性化が認められ、その上流因子であるbimの発現上昇を認めた。3,IKZF1はいくつかのアイソフォームをもつが、LENの存在下では、IK6を除いたすべてのアイソフォームが分解されていた。IKZF3はLENにより代償的に発現の上昇がみられ、メカニズムにIKZF1の関連が示唆された。4,NOD/SCID/γnullマウスを用いてPh+ALL細胞の生着実験と、治療モデル実験を行った。移植後のControl群の生着率は29.7%であったが、LEN、IMA共投与マウスでは0.3%著明に低下していた。また、治療モデル実験では、移植後30日の時点で、control群の生存率は0%である一方、共投与マウスでは全例生存しており、50日の時点でも約60%が生存していた。 以上からLEN、IMのPh+ALL細胞に対する抗腫瘍効果は明らかであり、新規治療法の確立につながる可能性が強く期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画予定として、平成28年度は、①ALL細胞株を用いて抗腫瘍効果が得られるかを明らかにする、②抗腫瘍効果のメカニズムの探索を主眼とした。また、平成29年度以降に、③IKZF遺伝子変異との関連についての検索、④チロシンキナーゼ阻害剤耐性Ph+ALLに対する効果の検討、⑤Ph+ALL白血病モデルマウスに対する効果の確認を計画した。 これまでに、①に関しては抗腫瘍効果が確認され、同様に⑤に関しても東海大学の技術補助の下Ph+ALL細胞株移植モデルマウスにおいて、LEN、IMは移植細胞生着率の低下、生存期間の延長に寄与することを示すことができている。②、③に関しては細胞死を主導するcaspase-3といった因子の発現状況解明や、その背景としてのミトコンドリア上でのアポトーシス制御に関わるBcl-2 family(Bcl-2,、Bcl-xl、Bax、Bad、Bim)の発現状況を確認している。IKZF1、3のLEN、IMに対する応答が明らかとなってきており、進捗状況としては順調であり、一部では予定以上のものも存在する。 ④チロシンキナーゼ阻害剤耐性Ph+ALL細胞株に対する検討は、現在阻害剤耐性細胞の作製も含めた準備段階にあり、これまでに①~③で得られた結果と同様の手法であるThymidine uptake法、Alamar blue法による細胞活性、細胞生存による評価や、Flow Cytometory、Western Blotting法を用いたメカニズムの探索を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したチロシンキナーゼ阻害剤耐性Ph+ALL細胞株に対する検討を現在計画中であり、準備を進めている段階にある。 また、Ph+ALL細胞株での、LENによるIKZF1のアイソフォームの分解に関しては、細胞株により一部異なった分解様式を示すものが存在する。Ph+ALL患者の多くはIKZF1に変異を持っていることが明らかとなっており、IKZF1の変異の状況によりLENに対する感受性の違いが出現する可能性がある。このため、Ph+ALL細胞株のIKZF1アイソフォームのプロファイルを、RT-PCRによって明らかにすること、アイソフォームの発現と照らし合わせた抗腫瘍効果の層別化を図ることなどを、メカニズムのさらなる解明のため検討している。 LENは現在、多発性骨髄腫に対してDexamethazone(DEX)とともに用いる治療プロトコールが一般的なものとなっている。LEN、IMを用いた細胞死誘導では、これまで得られた成果で使用している濃度よりさらに低濃度のIMでも、抗腫瘍効果が期待できる結果が得られており、LEN、IM、DEXの3剤を用いることにより、各薬剤の用量を減じつつ相乗的な抗腫瘍効果が期待できる可能性がある。3剤を使用したThymidine uptake法で、2剤、単剤よりもより強く細胞活性を抑制する結果が得られており、LENを使用したさらなる治療法の開発に関しても検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
物品費の購入に際して、当初の見積もりよりも若干減額されたことにより未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度物品費として使用する。
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Research Products
(3 results)