2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K19636
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柴 直子 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (00639289)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 筋ジストロフィー / MMP-9 |
Outline of Annual Research Achievements |
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)患者やそのモデルマウス(mdxマウス)の骨格筋ではMMP-9の発現および活性が亢進している。研究代表者らによるダブルノックアウトマウス(mdx;MMP9-/-マウス)を用いた先行研究では、筋ジストロフィーの骨格筋においてMMP-9は炎症の収束、再生を遅延させることで、組織変性を促進していることが明らかとなり、MMP-9を治療標的とするDMDに対する新規治療の可能性を見出した。しかし、MMP-9の他分子との関係や作用メカニズムについては十分に解明し得ず課題として残った。mdx;MMP9-/-マウスの病初期の骨格筋では、MMP-9の基質であるオステオポンチン(OPN)のmRNA発現がmdxマウスに比し有意に増加しており、mdxマウスの変性骨格筋においてMMP-9は炎症壊死再生に伴うOPNの発現を制御している可能性が高く、筋ジストロフィーの骨格筋における OPNの強発現は,筋のリモデリングや再生に必要であると推測された。また、OPNと共通のレセプター:CD44に結合する細胞外マトリックスであるヒアルロン酸も変性骨格筋に多く存在し、MMP-9やOPNとの相互が示唆されたもののそのメカニズムは不明である。29年度にはCardiotoxinを用いて作成したマウスの傷害骨格筋モデルにおいても、MMP-9 の欠損によりOPN遺伝子発現が亢進しており、同時期にマクロファージ遊走ケモカインであるMCP-1の遺伝子発現およびマクロファージの浸潤が増加する一方で、好中球遊走ケモカインである MIP-2の遺伝子発現および好中球の浸潤は減少し、さらに再生促進作用を有するM2マクロファージの浸潤が増加するとともに、炎症の収束および再生が促進されていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
傷害骨格筋モデルにおけるMMP-9の細胞浸潤やケモカイン発現への作用に関して、生体内での現象を捉えることができ、次年度はそのメカニズムの解明のための研究を進めていく予定であり、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスの傷害骨格筋組織において、MMP-9欠損により一過性にOPN遺伝子発現が亢進し、同時期にMIP-2遺伝子発現とともに好中球浸潤が軽減し、MCP-1遺伝子発現とともにM2マクロファージの浸潤が増加し、組織の炎症の収束および再生が促進されていることが確認されたことを受け、そのメカニズムの解明のための実験を進めていく予定である。MMP-9はOPNを切断して32kDaの活性型フラグメントを産生するが、32kDaのOPNは骨髄由来抑制細胞(CD11bおよびGr-1が陽性)産生を誘導する作用や、各種炎症細胞の遊走を制御する作用を有することが報告されている。MMP-9欠損マウスと野生型マウスとの間で傷害骨格筋組織におけるOPNのプロセシング状況などを比較検討し、骨格筋炎症に伴うケモカイン発現や炎症細胞の遊走の変化がMMP-9による直接的な作用によるのか、OPNのプロセシングを介する作用であるか、またそれ以外の影響がないかについても解析する。
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Causes of Carryover |
29年度に予定していたMMP-9およびOPNのケモカインのプロセシング作用を含めた他分子に対する作用に関する解析がやや遅れ、次年度使用額が生じた。研究計画を一部変更し次年度に延期して効率的に研究を進めていきたいと考えており、次年度使用額は平成30年度請求額と合わせて、試薬などの消耗品購入、論文作成、学会発表などの費用にあてる予定である。
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