2016 Fiscal Year Research-status Report
網羅的遺伝子解析を利用したAlport症候群の診断体系の確立
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16K19642
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山村 智彦 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (30770242)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Alport症候群 / 網羅的遺伝子解析 / 高い診断能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はまず、研究計画に従いアルポート症候群(AS)の原因遺伝子及びASの重症化因子として報告されているポドサイト関連の遺伝子計45遺伝子を含めた次世代シークエンサー(NGS)解析用の疾患パネルを作成した。 更に、実際に全国の小児腎臓病医もしくは腎臓内科医から遺伝子解析の依頼を受け、昨年度中におよそ100件のAS疑い症例の患児(患者)に対して実際に作成したNGS疾患パネルを用いた解析を施行した。昨年度前半に開催された関連学会(日本腎臓学会、日本小児腎臓病学会)でも当研究室においてNGSを用いたASの網羅的解析を行っている旨の案内をしたことにより、前年度までの平均解析件数(約50件/年)を大きく上回る検体の解析が可能であった。 これらの解析の結果、およそ90%程度の症例においてASの原因となる遺伝子変異を同定する事が可能であった。また、ASが疑われる症例ではあったものの、他の類似した臨床経過や病理学的所見を呈する遺伝性疾患であることが判明した症例も1例存在した。また、過去に当科で従来の直接シークエンス法による遺伝子解析で原因となる遺伝子変異が同定されなかった13家系についても今回作成したNGS疾患パネルによる解析を施行したところ、新たに4例でASの原因遺伝子変異が明らかとなった。更に、2例においては他の遺伝性腎疾患の診断に至った。 上記の結果(途中経過)より、今回作成したNGS疾患パネルによるASの網羅的遺伝子解析法は従来の方法と比較し遜色ない診断能力を有する他、従来法で診断できなかった症例の診断を可能にし、他の遺伝性腎疾患の患者をも診断しうる有用なツールである事が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、昨年度は「1.NGS疾患パネルの作成」「2.全国から年間100件を目標とした検体収集」「3.NGS疾患パネルを用いた遺伝子解析の実施と修飾遺伝子候補の検索」を実施する予定としていた。実際に昨年度はNGS疾患パネルの作成を行った他、関連学会で検体収集の呼びかけを行い、目標である年間100件を超える検体を集める事が可能であった。また、NGS疾患パネルを利用した解析も順調に実施できており、前項でも述べたように90%近い高い診断率でASの遺伝学的診断を行う事が可能であった。 ASの重症化に寄与する可能性のあるポドサイト関連の修飾遺伝子の変異については、現段階では明らかに修飾遺伝子であったと確定できる変異は同定されていない。しかし、今後症例数が更に増えることによって、共通した遺伝子の異常を有する患者のASの臨床度が重症であるかなどの検討を加えることが可能となることが期待される。 以上より、当初の計画と照らし合わせた昨年度の研究進捗状況は概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は概ね計画通り順調に研究が進行しており、今後も同様のペースで研究を続ける所存である。また、ASの重症化に寄与する可能性のある修飾遺伝子の検索については、以下の方法も追加しさらに積極的に探索を進める方針とする。つまり、既に過去にASの遺伝学的診断がついている症例の中で、特に臨床経過が重症である症例を全国より収集し、今回作成したNGS疾患パネルを用いた網羅的遺伝子解析を施行し、修飾遺伝子の候補遺伝子を検索する。これらによって修飾遺伝子の候補とされた遺伝子の変異が当科で過去に従来法による解析を行った症例で認められるかどうか、修飾遺伝子の候補遺伝子の変異が軽症群や過去の知見より予測される重症度と一致する症例では存在しないことを確認していく。
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Research Products
(2 results)