2016 Fiscal Year Research-status Report
カルシニューリン阻害薬の川崎病類似冠動脈炎に対する作用機序の検討
Project/Area Number |
16K19652
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村田 憲治 九州大学, 環境発達医学研究センター, 学術研究員 (70770642)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 血管炎 / 川崎病 / 免疫抑制剤 / 小児科 / カルシニューリン阻害薬 / MyD88 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルシニューリン阻害薬をNod1関連川崎病類似冠動脈炎モデルマウスに投与したところ、予想に反して冠動脈炎の増悪が確認され、さらにマクロファージのTNF産生が亢進することが確認されたため、その作用機序を明らかにする目的で以下の検討を行った。 まず、遺伝子改変マウスを用いて、本事象に関与するシグナル経路を検討した。MyD88(TLRの下流にあるアダプター分子)、CARD9(非TLR自然免疫シグナル経路のアダプター分子)の各遺伝子改変マウスと野生型マウスを用いて、カルシニューリン阻害薬によるNod1関連冠動脈炎の程度を評価したところ、CARD9欠損マウスでは野生型と同等であったのに対し、MyD88欠損マウスでは有意に冠動脈炎が減弱していた。また、MyD88欠損マウスと野生型マウス由来の骨髄から誘導したマクロファージを刺激して、Beads array法を用いて培養上清のTNFを測定したところ、MyD88欠損マウス由来マクロファージでは有意にTNF産生が抑制された。以上より、カルシニューリン阻害薬はMyD88関連シグナル経路に作用すると考えられた。 次に、Nod1リガンドが作用すると考えられている血管内皮細胞は、カルシニューリン阻害薬で刺激してもIL-6やIL-8といった炎症性サイトカインの産生に明らかな影響はみられなかった。次に、接着因子の発現をreal-time PCRやフローサイトメトリーで評価したところ、カルシニューリン阻害薬によりICAM-1やE-selectinの発現が亢進した。以上より、マウス冠動脈炎の増悪に血管内皮細胞の接着因子発現の亢進が関与している可能性が考えられた。 最後に、T細胞とB細胞が欠損したSCIDマウスのNod1関連冠動脈炎がカルシニューリン阻害薬で野生型と同程度に増悪することを確認し、今回の冠動脈炎の増悪にT細胞とB細胞の関与が低いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に記載した平成28年度の計画はほぼ予定通りに達成され、順調に進捗しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に実施した研究結果より、カルシニューリン阻害薬がMyD88関連シグナル経路に作用していると考えられたため、その経路の刺激物質であるLPS(toll like receptor 4のリガンド)とカルシニューリン阻害薬との相互作用について、Nod1関連冠動脈炎に対する影響と、マクロファージのサイトカイン産生に対する影響の両方を検討する。また、さらにMyD88に関連する各分子(TLR4など)の遺伝子改変マウスを用いて、カルシニューリン阻害薬の作用点のさらなる解明を進める。 また、申請者らは摘出した心臓をコラゲナーゼで処理した上で浮遊細胞を回収し、フローサイトメトリーを用いてCD45陽性の白血球を解析する方法を確立した 。この“心臓浸潤細胞のフローサイトメトリー解析”を用いて、1)非投与群(Nod1リガンドのみ)、2) シクロスポリンA投与群、3) タクロリムス投与群における冠動脈に浸潤した炎症細胞のプロファイルを解析し、カルシニューリン阻害薬投与群において、どのような炎症細胞浸潤の変化が起こっているかについて検討を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度の実験に用いたマウス(遺伝子改変マウス)の費用が低く抑えられたが、計画している実験を進めるためにはさらにマウスの購入や研究用物品の準備が必要である。さらに、平成28年度は学会等での発表の機会がなかったこともあり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験計画に基づいて、さらに遺伝子改変マウスを含めたマウスや研究用物品の準備に用いる。また、研究成果の発表のための論文作成や学会発表を行っていく予定である。
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