2018 Fiscal Year Research-status Report
出生後FOXP3のエピジェネティクス変化と免疫寛容の関係に関する解析
Project/Area Number |
16K19667
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
山崎 晋 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80771774)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新生児 / 免疫 / ヒストン脱アセチル化 / エピジェネティクス / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、制御性T細胞の細胞表面マーカーであるFOXP3のエピジェネティクス変化の違いから「アレルギー疾患の病態は免疫寛容不足型と免疫寛容崩壊型の二つに分けられる」という仮説の立証のため、まず制御性T細胞のFOXP3が出生後どのように脱メチル化をされ発現していくか検討することを目的とした。しかし、臍帯血中と日齢4の間で起こるFOXP3のCNS領域のメチル化の変化について5症例10検体で解析を行ったが有意な差は観測されなかったたためFOXP3のCNS領域のメチル化に絞らずにヒストンのアセチル化に関わる因子の検討をすることとし、臍帯血と成人血において免疫細胞の発現に関わるエピジェネティクスの一機序であるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に注目した研究を平行して行った。 ヒトでは18種類にHDACが知られているが、その内11種類のHDAC阻害能について網羅的に酵素アッセイ法を用いて検討した。臍帯血20例、成人血10例の検討において臍帯血ではHDAC11の阻害能が高いことが確認された。HDAC11は制御性T細胞のFOXP3の発現を抑制する作用を持つため、新生児はHDAC11を阻害することによって免疫寛容能力を高めている機序が推察された。 近年、腸内細菌が産生する酪酸がHDAC阻害能を介して制御性T細胞を誘導する機序が知られ、また血液中のβOHB)も酪酸と同様にHDAC阻害能を持つことが証明された。そのため、臍帯血の高いHDAC阻害能の原因として血液中の酪酸に注目し、血液中のβOHB濃度も合わせて検討した。臍帯血においてはβOHBが高値であったが、対応するHDACに阻害能の差を認めず、βOHBが鍵となってHDAC阻害能を維持していることは証明できなかった。 新生児は高いHDAC11阻害能により制御性T細胞を誘導する可能性があるが、このHDAC阻害能の原因は今後の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であったアレルギー児と正常児のFOXP3領域のメチル化の差についての言及はできなかったが、新生児が何故免疫寛容が有意な状態に保つことができているかのエピジェネティクスな機序の一端を解明し得た。 当初の方針とは違う機序の解明で現在英論文化し投稿をしているところだが、現状まだacceptされておらずreviceによる追加検査や実験の可能性がある。当初の予定では3年で英論文化の予定であったがまだ論文化は完成していないことから(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究成果では血液中のヒストン脱アセチル化酵素阻害能という未開発の分野と胎児期・新生児期の免疫寛容能力に関連付けた初の研究である。 本研究成果ではHDAC11阻害能が免疫寛容能力の指標になる可能性があると考えているが、その免疫学的裏付け(フローサイトメトリーによる制御性T細胞の数やFOXP3の発現量の比較、抑制性サイトカインとの相関)がまだ不十分ではある。 今後、この研究を補完するため検討を重ね、HDAC11阻害能を免疫抑制能のマーカーとして利用や、制御性T細胞を誘導する新規治療薬のターゲットとして利用することを展望としている。 今後、本研究分野の発展は免疫が関わるアレルギー疾患のみならず、胎児期・新生児期の免疫寛容能力は不妊の原因や早産の原因にも関わっていることが知られているため、不妊の原因マーカーや早産予測マーカー、新規治療薬として役立てる可能性がある。
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Causes of Carryover |
検体回収と解析に想定より時間がかかり論文投稿にまで時間がかかった。 現在、英論文投稿中であるが、今後はreviceにかかる追加検査や、検体解析情報ソフトの追加、再投稿に備えた英文校正費、Journal投稿料、などが必要経費として予定している。
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