2017 Fiscal Year Research-status Report
MCT8異常症の新規診断法の開発と神経障害モデル動物を用いた遺伝子治療の有効性
Project/Area Number |
16K19676
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
岩山 秀之 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00757726)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MCT8異常症 / 遺伝子治療 / 早期診断 / 甲状腺ホルモン / 輸送膜蛋白 / reverse T3 / 先天性大脳白質形成不全症 / 精神運動発達遅滞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、遺伝性甲状腺疾患(MCT8異常症)の早期診断法、モデルマウスの作製、遺伝子治療法の開発を目的とした。MCT8異常症は、脳内への甲状腺ホルモンの輸送障害によって重度の神経障害を呈する遺伝性疾患で、現時点では診断・治療法がない。以下に現在までの進捗状況を記載する。 1) LC-MS/MSによる血清での各種甲状腺ホルモン(T2,T3,T4,rT3)の測定を可能にし、現在はT3/rT3比による病状との関係性を比較し、Controlデータを取集している。また、原因不明の精神運動発達遅延児におけるMCT8異常症の大規模解析を倫理委員会に提出し、承認を得た。(承認番号:17-H164) 2)モデルマウスは遺伝子解析を行い、間違いなくノックアウトマウスが得られていることを確認したが、ウェスタンブロットの結果、目的であるOATP1C1蛋白の合成減少はみられるものの、合成されていることがわかった。そのため、研究の延長と共に、新しくMutationを確認した系統を交配し、確実に表現型の得られる蛋白合成が欠失したマウスの作成を目指す。 3)遺伝子治療研究については、上記マウスの作成が遅れている為に行う事ができなかった。しかし、既に新しい系統の作成は開始しており、表現型解析が終了後、速やかに(3か月以内)研究を開始できる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主に遅れている原因は2)のダブルノックアウトマウスの作成である。 申請者はCRISPR/Cas9法でp.P23Rfs*50またはp.F25Vfs*44等の変異を持つ、蛋白の合成早期にストップコドンを生成し、活性を持たないと考えられるマウスを作製したが、ウェスタンブロット等により、目的蛋白であるOATP1C1を確解析した所、合成量が減少しているものの、合成が確実に欠失しているとはいえないものであった。 また、表現型としてみられるはずの甲状腺ホルモン値も野生型と差がなく、間違いなく機能を持つOATP1C1蛋白が産生されていると結論に達した。 この現象を説明できる可能性として、定型外翻訳という現象(理研_Scientific Report_2016)があり、ゲノム編集技術により目的とするフレームシフト変異を導入したにもかかわらず、想定外の蛋白が翻訳されるという現象である。 今回、同様の現象が起きている可能性が考えられ、すぐに新しい系統を作成し、現在ホモマウスの交配を進めている。 今後の研究の進行においても、目的蛋白のノックアウトマウスの作成が重要であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進にとっても上記、目的蛋白のノックアウトマウスの作成が重要となるため、新しい系統作成の為に、各系統の精子凍結を行い、予測外の結果を得た後すぐに新しい系統作成に移れる準備を整えた。 また、解析に関する実験においても、既に系が立ち上がっておりすぐに解析できる。 今後は、ダブルノックアウトマウスを作成し、モデルマウスに対するマイクロCT/MRIによる表現型解析(放射線医学総合研究所)や行動解析(藤田保健衛生大学)を予定しており、放射線医学総合研究所には既に研究相談を行っている。
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Causes of Carryover |
ノックアウトマウスの作製に遅れが生じており、遺伝子治療実験を開始することができず、その分の予算が浮いたため、次年度使用額が生じた。ノックアウトマウスの作製終了後、計画通り遺伝子治療実験を開始する予定である。
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