2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性小頭症責任遺伝子ASPMの脳の生涯を通じての分子機能解明
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16K19689
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
外崎 円 京都府立医科大学, 医学部, プロジェクト研究員 (70745637)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 先天異常学 / 細胞周期 / ASPM |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 脳特異的Aspm欠損マウス(Aspm KO)を用いた脳形成過程の解析 1) 皮質サイズ:大脳皮質の厚さは、胎齢16.5日でのみAspm KOでは野生型(WT)に比し、有意な減少がみられた。層形成のマーカー(Tbr1、Ctip2、Satb2)によって構成を検証したところ深層ほど層厚が減少していた。胎齢16.5日には、Aspm KOで脳室帯の減少も確認された。ただし、6層構造は正常に保持されていた。 2) 細胞増殖・細胞周期:細胞周期におけるM期(リン酸化ヒストン)およびS期(BrdU投与1時間後の分布)の変化について検証した。胎齢12.5日、胎齢14.5日、胎齢16.5日において、Aspm KOとAspm WTで脳室層におけるM期細胞数、S期細胞数に有意差がなく、皮質形成期における細胞増殖・細胞周期に関してAspm欠損の影響は及ばないことが示唆された。 3) 神経新生・細胞遊走:EdUパルスアッセイ法を用いて、神経細胞新生、細胞遊走に関して解析した。EdU投与2日後(胎齢12.5日/胎齢14.5日、胎齢14.5日/胎齢16.5日)に解析を行った。胎齢12.5日/胎齢14.5日では、EdU標識細胞数、皮質板・中間帯における分布パターンに、両群間に有意差はなかった。胎齢14.5日/胎齢16.5日では、Aspm欠損マウスにおいて、Aspm野生型に比し、EdU標識細胞総数、中間帯における細胞数が有意に減少したが、これらは未熟なニューロンマーカー(DCX、Tuj1)陽性であることが判明した。この差異は、胎齢14.5日以降における新生神経細胞数の減少によるもので細胞遊走の影響は乏しいと予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
条件的Aspm欠損マウス: Fucci-NesCreERT2-Aspmfloxを用いた解析条件設定に予想以上に時間がかかり、当初の計画が大幅に遅れた。現在、新規のマウス:Fucci-NesCre-Aspmfloxを作製中であり、今年度は当該マウスを用いた研究計画に変更する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) タイムラプスによる細胞周期解析:G1期の核が赤色の蛍光、S/G2/M期の核が緑色の蛍光を発するFucci を発現するFucci-NesCre-Aspm KOを用いて、仔終脳壁前1/3から、脳脊髄膜をつけた状態で組織切片(200μm)を作成し、コラーゲンゲルに包埋して、ガラスボトムディッシュ内で組織培養を行う。この組織培養ディッシュを、共焦点レーザ顕微鏡に設置したCO2細胞培養チャンバーに移し、タイムラプスで一細胞レベルにおけるG1期、S/G2/M期の移行を24時間~48時間観察する。①細胞周期の経過時間、脳室帯で起こるエレベーター運動に関する位置変化、②蛍光色および細胞形態により増殖・分化、対称・非対称分裂情報などの情報が得られる。すなわち、得られた情報によって単一細胞レベルでかつ多角的にAspm抑制による微小環境への影響が明らかになる。 2) 出生後マウスにおける脳形成解析:当該マウスに、生後15週齢、30週齢で、7日間BrdUを投与し脳を摘出、BrdU、神経幹細胞マーカー(Nestin, Musashi, Sox1/2)、神経細胞マーカー(Doublecortin, NeuN)、グリアマーカー(GFAP, Olig2, CNP, Iba1)、シナプスマーカー(synaptophysin, PSD95)などで免疫染色し、両側海馬歯状回顆粒下帯と側脳室前方の脳室下帯における成体神経幹細胞の再生能を解析する。Fucciの蛍光により、成体神経幹細胞の細胞周期にAspm分子が及ぼす影響が解析できる。以上の実験によって、Aspmの機能が脳の発生段階を追ってどのように変化するか、ならびにその成熟脳での帰結を明らかにすることができる。
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