2017 Fiscal Year Research-status Report
低出生体重児モデルラットにおいてARBは腎機能障害を抑制する
Project/Area Number |
16K19694
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
村野 弥生 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80771922)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 子宮内発育遅延 / 巣状糸球体硬化 / アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
1980年代に低出生体重児で出生した児が将来心血管障害を来すという疫学研究が報告されて以来、様々な研究がなされ、現在では低出生体重児(特に子宮内発育遅延児)で出生することにより、成長後に生活習慣病をはじめとする様々な疾患の発症リスクが上昇するというDOHADの概念が確立されている。腎臓分野では出生時に腎臓のネフロンが少ないことがわかっており、これにより、腎臓のネフロンひとつひとつに通常よりも負荷がかかり、過濾過となることが報告されている(Brennerら、Hyperfiltration theory)。そしてこの過濾過の状態が持続することにより、巣状糸球体硬化症を発症し、腎機能障害を呈することが知られている。 一方、1980年代にサーファクタントが開発されて以来、新生児医療の進歩は著しく、より低出生体重でより在胎週数の少ない児が救命されつつある。しかし、これらの児が成人に達しつつある昨今、これらの児がDOHAOの概念に基づき、腎機能障害をはじめとする様々な疾病を発症することが知られているものの、その管理や治療法については不明な点が多い。 そのため、子宮内発育遅延児の成長後の腎機能障害の治療法の確立の一助を担いたいと考えた。過去に我々は子宮内発育遅延モデルラットで、成長後に腎臓が巣状糸球体硬化症の像を呈し、レニンアンギオテンシン系が亢進していることを報告した。そのため、レニンアンギオテンシン系を抑制する機能があり、子宮内発育遅延以外の原因による巣状糸球体硬化症の患者に有効とされている、腎保護効果のあるアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬を子宮内発育遅延モデルラットに投与し、成長後の腎機能障害を抑制できるかを検討することを目的として研究を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
子宮動静脈結紮により、子宮内発育遅延ラットの作製を行った。出生体重は対照群と比較して子宮内発育遅延モデルラットで有意に低値であり、子宮内発育遅延モデルラットの作製に成功した。(モデルの作製の手技が確立せず、実験の進行がやや遅れた) その後、子宮内発育遅延ラットと対照群に分け、更にそれぞれアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(Losartan)を投与する個体と投与しない個体に分けた。(子宮内発育遅延のみ・子宮内発育遅延+Losartan内服・対照群・対照+Losartan内服の4群に分けた)これらの個体をそれぞれ32週まで成育し、32週で全ての個体を解剖し、腎臓検体を採取した。 この腎臓検体を用いて、まずリアルタイムPCRを行い、過去の文献で報告されている腎機能障害マーカーであるαSMA・TGFβ・UCP2を測定した(測定終了)。また腎臓の組織検体をホルマリン固定し、HE染色を行った。そのほか、現在、免疫染色を施行中で、同様に過去の文献で腎機能障害のマーカーとして報告のあるαSMA・TGFβ・CD68を染色している(現在、αSMA・TGFβの染色を終了して、CD68の染色を施行している)。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、リアルタイムPCRを用いて測定したαSMA・TGFβ・UCP2のRNA発現量を、子宮内発育遅延のみ・子宮内発育遅延+Losartan内服・対照群・対照+Losartan内服の4群間で比較する予定である。また、腎臓組織のHE染色が終了しており、これらで糸球体硬化指数(巣状糸球体硬化の程度の指標)の測定も予定している。現在進行中の免疫染色は6月中には染色を終了する予定である。染色終了後にαSMAとTGFβはその染色範囲を、CD68で染色を行った組織ではCD68陽性細胞数を測定し、同様に4群間で比較予定である。 これらの結果を解析し、12月末までに結果を出したいと考えている。結果については来年度の小児科学会・周産期新生児学会での報告と英文雑誌への投稿を考えている。 子宮内発育遅延モデルの確立に時間がかかり、研究の進捗状況がやや遅れているが、免疫染色を自動化された装置で行うこととしたため、短期間で再現性のある染色を進めることができている。
|
Research Products
(1 results)