2017 Fiscal Year Research-status Report
早産低出生体重児における脂肪細胞の数と大きさの変化が将来の疾病リスクに与える影響
Project/Area Number |
16K19695
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
中野 有也 昭和大学, 医学部, 講師 (40465224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肥満 / 脂肪細胞 / メタボリックシンドローム / 早産低出生体重児 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳幼児期までの脂肪組織の発達(脂肪細胞の数や大きさの変化)は、将来の肥満のリスクと関係していることが知られている。早産低出生体重児は将来生活習慣病を発症するリスクが高いことが多くの疫学的データから明らかとなっており、本研究では早産低出生体重児における将来の肥満や代謝合併症リスクを早期に把握し介入するため、乳幼児期における脂肪組織の発達を早産低出生体重児と正期産正常体重児の間で比較し、関連する指標との関係を検討するものである。 本研究は3年間での実施を予定している。初年度(平成28年度)は研究実施のための準備として、まずは当該機関の倫理委員会で研究計画について審議を受け、研究計画に実施の許可を得た。必要物品の入手、関係部署の調整などを行ったうえで、平成28年の12月から実際に研究協力者のエントリーを開始した。次年度終了時点(平成30年3月)までの16か月間で、合計67名のエントリーが得られたが、早産低出生体重児はそのうち13名しかおらず、十分な統計学的検出力をもって二群間で比較することはできない状況である。 現在までにエントリーしたものの中に、血液検査所見(空腹時血糖、インスリン、HOMA-IR、血清脂質、アディポネクチン、レプチン)が正常範囲を大きく逸脱していると考えられたものはなかった。中間解析では早産低出生体重児では乳幼児期に小柄・痩せ型である(体脂肪蓄積が少ない)傾向があった。脂肪細胞の評価は前処置に時間を要するためさらに少数での評価しかできていないが、早産低出生体重児では正期産正常体重児と比較して、脂肪細胞の大きさは変わらないかむしろ大きい傾向があった。以上を踏まえると、早産低出生体重児では、乳幼児期の脂肪細胞数が少なく、この時期に認められる脂肪蓄積は脂肪細胞の肥大と主に関係していると解釈されうるが、これらは症例数の蓄積をもって再検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではもともと、二重エネルギーX線吸収法(DEXA)を用いて、対象となる児の体脂肪量を評価する予定だった。しかし、実際に本研究実施にあたって、被爆のリスクなどについての対象候補者からの心配の声が強く、エントリーを見合わせる声が多かった。そのため、DEXAによる体脂肪量評価ではなく、身体計測値(BMIや肥満度、皮脂厚など)から体脂肪量から推測することで研究の質を保持しつつ、エントリー数を増やす方策を取った。その結果、平成29年12月~平成30年3月までの16か月間で、合計67名のエントリーが得られ、1か月あたり4.2名のペースである。これは前年度より若干低下しているが、それでも研究期間終了までに目標のエントリー数が得られるものと推測できる。しかし現在までエントリーしたものの中に早産低出生体重児が少ないため、今後も十分な人数に到達しない場合には、エントリー期間の延長も考慮する必要があるかもしれない。 その他の問題点として、これまでエントリーしたものが男児に偏っている点がある(女児は67名中7名しかいない)。このことは、エントリー対象候補者が外鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、陰嚢水腫に対する手術予定の乳幼児であり、これらの疾患はもともと男児に多い疾患であることから予見可能であった。しかし予想以上の偏りが認められていることから、最終的に①エントリー期間の延長、②男児のみでの検討、③統計学的に性別差を調整して検討、のいずれかを選択する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も、目標人数100名に到達できるようにエントリーを継続する。その際、特に早産低出生体重児については研究実施期間内に目標人数に到達するのに困難を伴う可能性が高く、謝金額の増額を検討したり、結果説明などの情報提供を拡充することでエントリー率を高める努力をする。また、それでも目標の人数に到達しない場合には、エントリー期間の延長も考慮する。 脂肪細胞の前処置後の評価(固定・単離後)については既に開始しているが、その多くは平成30年度にまとめて進める予定である。脂肪細胞の平均直径を測定し、採取した脂肪組織(g)あたりの脂肪細胞数も合わせて評価する。また、前述のように、体脂肪量については、DEXAによる評価は行わず、身体計測値(BMIや肥満度、皮脂厚など)から推測する。 得られたデータをもとに、早産低出生体重児と正期産正常体重児との間に脂肪組織の発達(脂肪細胞の数や大きさ)の違いを統計学的に解析する。また、早産低出生体重児症例のエントリー数が最終的に少なくなることも予想されることから、二群間比較だけではなく、両群合わせた対象において、出生体重や在胎期間と脂肪細胞の発達の特徴とに相関関係があるか、関係性の検討も合わせて行う。また、空腹時血糖値、インスリン、HOMA-IR、アディポネクチン、レプチン、身体計測値(体重SDスコア、身長SDスコア、BMI、皮脂厚など)との関係性を検討し、この時期の脂肪組織の発達の質に影響を与える因子を明らかにする。また、周産期情報や成長パターン、乳幼児期の栄養法の違い(母乳栄養or人工栄養、離乳食開始時期)が、それらに与える影響についても検討する。 得られた結果は内外の学術集会で発表し、研究終了後に論文化する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)平成28-29年度のエントリー数は目標数には到達しておらず、その影響でエントリー後に必要な血英検査や、協力者への謝金などにかかる費用が未使用となっていることが次年度使用額が生じた主要な理由である。また、脂肪細胞の固定・単離には時間がかかり、前処置後の脂肪細胞の評価も一部次年度(最終年)に繰り越した。
(使用計画)現在の概算によれば、エントリー数は最終年には目標数に到達する予定である。予定エントリー数が得られれば、それに伴って生じる血液検査や協力者のへの謝金、脂肪細胞の評価にかかる費用を繰り越し分から捻出する予定である。また最終年度までに、特に早産低出生体重児群のエントリー数が目標に大きく到達しない場合には研究期間の延長も考慮する。
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Research Products
(13 results)