2016 Fiscal Year Research-status Report
イトラコナゾールによるヘッジホッグ伝達経路阻害と獲得免疫の解析
Project/Area Number |
16K19718
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加来 洋 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (00769862)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 基底細胞癌 / 基底細胞母斑症候群 / イトラコナゾール / 二光子顕微鏡 / ヘッジホッグ伝達経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、基底細胞母斑症候群患者の生殖細胞のPTCH遺伝子の機能欠損変異があることが報告されたことをきっかけに、基底細胞癌の発症のメカニズムとしてヘッジホッグ伝達経路の活性化が関与していることが報告された。また進行例や多発例において、ヘッジホッグ伝達経路阻害剤が有効であると報告され、それらは腫瘍細胞のみに作用するだけでなく獲得免疫を亢進することがわかっている。近年、イトラコナゾールがヘッジホッグ伝達を阻害するという報告があり、実際一部の基底細胞癌に効果的であると報告された。今研究では、基底細胞癌に対する腫瘍免疫の機能においてイトラコナゾールがどのように働くか解明することを目指す。また、基底細胞母斑症候群患者における基底細胞癌へのイトラコナゾール内服療法が獲得免疫に果たす役割についても評価する。基底細胞癌を発症している基底細胞母斑症候群の患者に対しイトラコナゾールにて加療し、腫瘍径の評価、さらには腫瘍浸潤部位の免疫学的解析を行う。 我々はまず、二光子顕微鏡を使用し、実際の基底細胞癌を含む皮膚腫瘍の切除検体の一部を用い未染色で観察を行った。切除後1時間から4時間以内の検体を使用し、基底細胞の他に正常皮膚や日光角化症、ボーエン病、乳房外パジェット病も含め観察し条件検討を行った。対物20倍レンズを使用し観察した。日光角化症、ボーエン病を含む上皮内有棘細胞癌においては角層の肥厚と表皮角化細胞の核の腫大や細胞の腫大が観察され、また密度の増加や配列の乱れと表皮の肥厚を確認することができた。乳房外パジェット病では、角層内では表皮から排出されたと思われるパジェット細胞の死細胞が角層内に観察された。基底細胞癌は、表在型の基底細胞癌では、有棘細胞癌の細胞と比較して小型の細胞が腫瘍胞巣を形成し、メラニン顆粒と思われる蛍光の強い物質が胞巣内に散在していることが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
二光子顕微鏡を使用し、実際の基底細胞癌を含む皮膚腫瘍の切除検体の一部を用い未染色で観察を行った。切除後1時間から4時間以内の検体を使用し、基底細胞の他に正常皮膚や日光角化症、ボーエン病、乳房外パジェット病も含め観察し条件検討を行った。対物20倍レンズを使用し観察した。日光角化症、ボーエン病を含む上皮内有棘細胞癌においては角層の肥厚と表皮角化細胞の核の腫大や細胞の腫大が観察され、また密度の増加や配列の乱れと表皮の肥厚を確認することができた。乳房外パジェット病では、角層内では表皮から排出されたと思われるパジェット細胞の死細胞が角層内に観察された。なお表皮で異常な大型細胞が胞巣状に増殖していた。個細胞レベルで有棘細胞癌との形態的な区別をすることが難しく、光学顕微鏡と同等の精度で疾患の区別する所見の観察には今後の検討を要する。基底細胞癌は、表在型の基底細胞癌では、有棘細胞癌の細胞と比較して小型の細胞が腫瘍胞巣を形成し、メラニン顆粒と思われる蛍光の強い物質が胞巣内に散在していることが観察された。二光子顕微鏡による未染色での観察は、表層から120μmよりも深部になると画像の観察精度が著しく低下するため、個々の細胞形態の観察が難しく、そのため表在型基底細胞癌以外の基底細胞癌の観察が難しかった。メラニン顆粒が豊富な基底細胞癌ではさらに観察が難しかった。 また倫理委員会申請書の作成が遅れているため。現在、作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後我々は、イトラコナゾールが免疫機能に与える影響をヒト末梢血を用いて詳細に検討する。PBMCの状態でイトラコナゾールを添加し、樹状細胞の活性化及び成熟を評価する。また、イトラコナゾールが樹状細胞、および、組織球におけるPD-L1の発現を制御しているか確認を行う。 さらに基底細胞癌誘導マウスモデルを用いて、in vivoにおけるイトラコナゾールの免疫機能調整について検討を行う。具体的には、タモキシフェンにて基底細胞癌を誘導したマウスにイトラコナゾールを内服させ、腫瘍の大きさの変化、また組織学的な解析を行い、病変部の免疫組織化学的なプロファイルの変化、病変部でのサイトカイン、ケモカインの変化を解析する。 また基底細胞癌周囲の免疫細胞を二光子顕微鏡を用いたライブイメージング法で観察する予定である。今後は、特に表在型基底細胞癌において、in vivoでTAM(tumor-associated macrophage)を含む免疫細胞の動態をとらえ、腫瘍微小環境における免疫機構を解明し、また血管新生についても三次元的に検討したいと考えている。 最終的に ヒト基底細胞癌およびNBCCS患者を用いたイトラコナゾールの治療効果の検討を予定している。基底細胞癌患者に対しイトラコナゾール内服を1ヶ月行い、根治的全摘出手術を行う。生検時の標本と根治的全摘出術を行った標本を用いて免疫組織学的解析を行う。具体的には、研究協力者の大塚篤司が報告したCD4陽性、CD8陽性T細胞の腫瘍内浸潤、さらには基底細胞癌のMHC class I発現の上昇がイトラコナゾール内服によってみられるか確認する。また、イトラコナゾール内服前と内服後の腫瘍径を比較し、実際に抗腫瘍効果が得られたか検討する。
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