2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K19722
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鷲尾 健 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (80770388)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蕁麻疹 / コリン性蕁麻疹 / 日光蕁麻疹 / 汗アレルギー / 好塩基球刺激試験 / フローサイトメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では蕁麻疹の中で特にコリン性蕁麻疹と日光蕁麻疹に焦点を絞って診断及び治療法の確立を目指すものである。今年度申請者はコリン性蕁麻疹の中で眼瞼浮腫を伴う1型をまとめて報告し、このタイプでは汗アレルギーが原因となり得ることを示した。眼瞼浮腫を伴うコリン性蕁麻疹ではH2受容体拮抗薬の著効例が多いことを報告し、難治例に遭遇した場合の治療の一法を提唱できたと考えている。またコリン性蕁麻疹の4類型についてその診断・治療のアルゴリズムについて提唱した。現在までコリン性蕁麻疹の診断・治療アルゴリズムの報告は少なく、申請者らのグループが先駆的に対処法を提唱している。In vitroの研究として汗アレルギーを伴うコリン性蕁麻疹では、フローサイトメトリーを用いて、患者から採取した血液を汗と反応させることで試験管上でアレルギー反応が観察できることを示した。これは前述のコリン性蕁麻疹の診断・治療アルゴリズムに新たな診断ツールを提供することになり得る。また日光蕁麻疹においてもフローサイトメトリーを用いた研究で、紫外線を照射した血清を患者血球に加えることで、好塩基球の活性化が起こり得ることを確認した。刺激誘発型の蕁麻疹において、蕁麻疹が誘発され得る刺激を与える検査は重要な診断方法ではあるが、これらの負荷試験はアナフィラキシー等強い症状を誘発することがある。難治性蕁麻疹の診断において、採血検査で行える範囲を拡張せしめたことは、本研究の重要な知見と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度の目標として、日光蕁麻疹およびコリン性蕁麻疹において好塩基球活性化試験を用いて患者血球を用いて、蕁麻疹の誘発因子を加えることで実際に刺激誘発型の蕁麻疹の反応が試験管上で再現できるかどうかを検討することを課題とした。今年度の研究において、申請者らはこの2型の蕁麻疹において試験管上で患者血球に対して想定される原因物質を反応させることで好塩基球上でCD203cの上昇を確認でき、概ね研究計画通りに順調に進展したと考えている。この2型の蕁麻疹においては予想以上の症例数を集めて検討が可能であった。現在フローサイトメトリーを用いたアレルギー診断については残念ながら保険適応となっていない。このため申請者らは臨床的見地から現在一般的に広く用いられている方法でも難治性蕁麻疹の診断に使用でき、かつ今まで報告されてこなかった診断アルゴリズムの改良にも着手した。コリン性蕁麻疹においては、汗アレルギーを伴うタイプでマラセチア(真菌)のIgE-RASTを測定することで、高値を示す症例では既存治療に対して難治例が多いことを示した。これらの難治症例ではH2受容体拮抗薬の著効例が多いことも示し、難治性のコリン性蕁麻疹に悩む症例において現在使用可能な診断ツールと既存の治療薬との組み合わせで症状を改善し得る可能性を示した。今後はこれら現在使用可能な診断ツールと、好塩基球活性化試験を組み合わせて負荷テスト前に難治性蕁麻疹の診断が可能となるようより精度を高めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今回のフローサイトメトリーを用いた検討より判明した新たに課題となるべき事項として、フローサイトメトリーを用いた実験では現在の実験の手法では新鮮な患者血球が必要となるため、患者が遠方や多忙などの理由にて新鮮な血球を得ることが難しく、例えば以前に採血して保存されていた血清などで難治性蕁麻疹を診断できればさらに臨床現場において実践的であると考えられた。このため、従前の研究計画を一部変更し採血検査によるex vivoスクリーニング手法の確立としては、新鮮な血球を用いた今年度の手法のみならず、凍結血清など一定期間保存が可能な検体を用いての手法を確立していく必要があると考えた。今回の検討を進めるにあたり、例えば天疱瘡の診断においては患者から採取した皮膚組織に免疫グロブリンが沈着しているかどうかを調べる直接蛍光抗体法のみならず、患者から採取した保存血清を健常皮膚に用いる間接蛍光抗体法がある。今年度の手法では患者血球に対して刺激誘発となり得る因子(汗や日光を作用させた血清)を加えて試験管上でアレルギー反応が起こるかを測定したが、好塩基球活性化試験においても間接蛍光抗体法に着想を得て、健常血球に患者血清を作用させて反応を検討する。これらのより進んだ好塩基球活性化試験の検討にはより多数の表面マーカーの検索が必要と考えられるため、現在行っている青レーザーのみを使う実験系を拡張し、3レーザー(紫レーザー、赤レーザー)を用いた多色解析にて詳細を詰める方針である。
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Causes of Carryover |
実際に得られた臨床データについて統計ソフトの購入を検討していたが、機能を吟味した上で次年度に購入することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し金額については統計ソフトの購入に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Case of harlequin ichthyosis with a favorable outcome: Early treatment and novel, differentially expressed, alternatively spliced transcripts of the ATP-binding cassette subfamily A member 12 gene.2017
Author(s)
Washio K, Sumi M, Nakata K, Fukunaga A, Yamana K, Koda T, Morioka I, Nishigori C, Yamanishi.
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Journal Title
Journal of Dermatology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed