2016 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症ドパミン過感受性精神病の新しい治療戦略の開発
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16K19749
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小田 靖典 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任研究員 (50770583)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドパミン過感受性精神病 / ドパミンD2受容体 / グリコーゲン合成酵素 / グルタミン酸 / γ-アミノ酪酸 / N-メチル-D-アスパラギン酸受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症ドパミン過感受性精神病(DSP)には、主にドパミンD2受容体(DRD2)の代償性増加が関与していると考えられている。 今年度はDSPモデルラットを作製し、抗精神病薬の持続投与直後および断薬1週間後の2点で、線条体中のドパミンシグナルの中核を担うグリコーゲン合成酵素3(GSK3)を測定した。結果、DSPモデルラット線条体中GSK3は①投薬直後では対照群と比較して変化がなかったが、②断薬1週間後では有意に低下していた。このことからDSPではDRD2の増加に対して代償性にドパミンシグナルが減弱していることが示唆された。また、放射性リガンドを用いた結合試験により断薬1週間後のDSPラットでDRD2が増加していることを確認している。 一方で、グルタミン酸系シグナル異常がドパミン過感受性を引き起こすことも知られており、DSPモデルラットの脳内グルタミン酸系シグナルについても更に調査した。その結果、断薬1週間後のDSPラットでは線条体中のグルタミン酸/γ-アミノ酪酸(GABA)比が有意に低下していた。一方で、nonDSPラットでは線条体中のN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体2Bの発現が減少していた。これらの結果から、①DSPではドパミン過感受性に対して代償性にグルタミン酸シグナルが減弱している、②nonDSPではNMDA2B受容体の低下が、DSPの主症状の一つである遅発性ジスキネジア形成を予防している。が、NMDA2B受容体の機能を考慮すると、nonDSPはNMDA2B受容体機能低下により治療抵抗性状態となっている可能性がある。このことは、治療抵抗性DSPは適切な抗精神病薬治療に対して反応する群であり、nonDSPが真の治療抵抗性であると考えている我々の仮説とも一致していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は ① 抗精神病薬を2週間持続投与し、線条体中のDRD2およびGSK3を測定する。 ② 抗精神病薬の2週間持続投与後、1週間の断薬期間をもうけ、DSP状態となったラット線条体中のDRD2、GSK3を測定する。 であるが、これについてはほぼ予定通り完遂しており、加えてグルタミン酸シグナルについても調査しており、概ね予定通りの進捗状況であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究計画は、 ① 抗精神病薬の2週間持続投与にリチウムを併用することで、DSP予防効果の有無を検証する。 ② 抗精神病薬の2週間持続投与後、リチウムを1週間投与し、DSP治療効果の有無を検証する。 であり、この通り実施していく予定である。
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