2017 Fiscal Year Research-status Report
オキシトシン長期投与による社会性の変化―脳磁図を用いた検討
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16K19756
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
廣澤 徹 金沢大学, 附属病院, 助教 (80645127)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳磁図 / 自閉スペクトラム症 / オキシトシン / Auditory mismatch field / Empathy quotient |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害(ASD)は社会性の障害を主とする発達障害であり、その有病率の高さと患者の生活の質に与える影響の大きさから、近年社会問題となっている。その原因は依然として不明であり、有効性が確立されている治療も存在しない。 治療薬の候補として、オキシトシン(OT)がある。近年その効果が実証されつつあるが、その知見のほとんどが短期あるいは単回での使用の結果であり、長期間使用した場合の臨床症状への効果は明らかになっておらず、その効果の生物学的な基盤もわかっていなかった。そのため我々はASD者をリクルートし、OTを8週間投与しOTが脳機能と社会性に与える影響を調査した。 評価の指標として、Auditory mismatch field(MMF)とEmpathy quotient(EQ)を採用した。MMFは話者が聞き手の注意を促すために発する声に対する脳の反応を脳磁図(Magnetoencephalography, MEG)で計測したものであり、典型的には社会性の指標となる(専門の認知機能課題を行っている最中の脳の活動を計測する)。EQは他者へ共感する度合いを数値化したものであり、質問紙法により評価される。他、副次的な指標としていくつかの心理検査を行った。 当該年度は公募した10名のASD者にはOTを1日1回24IU、8-10週間にわたり投与した。OT投与前、8-10週間の長期投与後にそれぞれMMFとEQを測定した。現在得られたデータを解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初20名の被験者を予定したが10名しか集まらなかった。当初予定していた通りAutism Diagnostic Observation Schedule(ADOS)でASDを診断し、症状を予定通りRepetitive Behaviour Scale-Revised(RBSR), Zung Self-Rating Depression Scale(SDS), The State-Trait Anxiety Inventory(STAI), The World Health Organization Quality of Life (WHOQoL), EQ, Autism spectrum Quotient(AQ)を評価した。加えて、より社会性に特化したMEG上の指標であるMMFに着目し、専門の課題を施行した。課題では「ね」という言葉を聞き手の注意を促す発音と、平坦な発音の2種類の異なった発音で聞かせ、脳活動の違いを解析する。 当初予定していたコヒーレンス解析ではOTの効果を検出できなかったため方針を変更し、より社会性を反映すると考えられるMMF解析など、その他の解析法も使いながら多面的に解析を行っている。具体的には得られたMEG波形を100msごとの刺激前波形と、900msの刺激後波形に分け、2種類の発音に対する脳の反応を比較した。OT投与前後でその反応の違いを比較し、またEQの変化とその変化の相関の有無を統計的に検定している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っているMMF解析でOTの有意な効果が検出できれば、予定通り英文国際誌に投稿し成果を公表する。 有意な効果が検出できなければ引き続き他の側面からも結果を解析する。
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Causes of Carryover |
理由は、解析用パソコンを購入したり、ヘリウムガスを購入したり、国際学会発表などを行う予定であったが、偶然留学する機会を得た事にともない該当物品を購入できず、国際学会発表もできなかったためである。 使用計画として、引き続き単価が高騰し続けているヘリウムガス料を補填するため、また膨大なデータを解析するための解析ソフトウェアの補充と専門のパーソナルコンピュータの維持・購入のために研究費を活用し、研究成果を国際学会、国際科学雑誌に発表する。
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