2018 Fiscal Year Research-status Report
22q11.2欠失細胞から捉える統合失調症の病態解明
Project/Area Number |
16K19760
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
有岡 祐子 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10709497)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 統合失調症 / iPS細胞 / 22q11.2欠失 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症の発症メカニズムとして、発症リスクゲノム変異が引き起こす複雑な分子ネットワーク異常が予想される。しかし、リスクゲノム変異は多様で、未だ統一的な発症メカニズムは明らかにされていない。この状況を打破するため本研究では、均一なゲノム変異の下で統合失調症の分子病態の解明を目指す。特に統合失調症の最も高い発症リスクゲノム変異である22q11.2欠失を標的とし、患者由来iPS細胞を用いて解析をおこなった。 平成30年度では、健常者3例(健常者群)と22q11.2欠失患者2例(22q11.2欠失患者群)由来のiPS細胞をそれぞれドパミン神経系へと誘導し、解析をおこなった。まず、神経細胞の形態解析を実施したところ、健常者群に比べ22q11.2欠失患者群では、有意に神経突起長が短縮、MAP2陽性の樹状突起数が減少、突起のelongation異常が起きており、22q11.2欠失患者の神経細胞では神経発達異常が生じていることが示唆された。特に、神経発達に重要であるアクチン動態(フィロポディアおよびラメリポディア)異常が顕著であった。 次に、細胞内ストレスに対する応答性を健常者群と22q11.2欠失群で比較した。細胞内ストレスへの応答異常は精神疾患との関連が示唆されているためである。小体ストレス誘導にはツニカマイシン、酸化ストレスには過酸化水素水を用いた。結果として、22q11.2欠失群では小胞体ストレスに対して耐性が低いことが明らかとなった。 以上より、22q11.2欠失患者由来のドパミン神経細胞では種々の脆弱性が生じていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
22q11.2欠失患者iPS細胞から誘導した神経細胞の表現型を同定し、現在論文投稿中となっている。1年の補助期間延長により、論文発表まで完了予定となる見込みで、順調だと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
補助期間を1年延長し、本研究課題で得た知見を論文にて公表完了する予定である。 また、新規の患者リクルートに成功したため、患者iPS細胞の追加樹立・解析をおこない、本課題を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
アイソジェニック株作製を計画していたが技術的に困難と判断し中断した。そのため、アイソジェニック株での解析費用が未使用分となった。一方で、複数名の新規患者リクルートに成功したことから、次年度にかけて新規患者iPS細胞樹立費用および解析に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)